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* 第十七話 * ~友紀の場合~ ①

天野友紀。


16歳なりたてホヤホヤ。


東北のとある地から、関東のハズレにある一部寮制の共学高校に入学した。


高校には、日本全国各地からは勿論、台湾や香港辺りからも入学者が集まっている。


何が有名という訳でもないが、某宗教の教祖が創立した学校だと言えば、何故これだけ全国から集まっているかが多少は理解してもらえるだろうか。


この学校は、入学早々に二泊三日の研修旅行がある。


まだ、ろくにクラスメイトたちの顔も名前も覚えていないし、友達もできていない状況での旅行。


なかなかしんどいが、荒療治でもある。


これから3年間、寝食を共にせねばならない仲間たちとの最初の裸の付き合いの場だからだ。


積極的な子たちは、この研修旅行の間にどんどん友達を作っていく。


研修の間は上級生がいないから、その点は伸び伸びと過ごせるのが利点でもある。


不思議と関西や関東の都会から出てきた生徒たちは比較的早く馴染む。


実は、同じ日本なのに、方言の壁は意外と厚いのだ。


田舎から出てきた生徒は、もともとが良く喋る明るい子だったりしても、訛りを堂々と口に出せずに、無口になる。


まして、その地方から出てきたのが自分ひとりの場合、確実に標的になる。


当たり前だと思って発した言葉が、物笑いの種となり、最悪の場合、3年間のあだ名となってしまう。


東北から来た友紀は、まさにそんな生徒のうちの一人だった。


自分の言葉が聞き返されたりせず、ちゃんと通じるか自信が持てず、いつのまにか無口で大人しいキャラとなっていた。


中学までは元気ハツラツだった子たちが、ホームシックも手伝って、徐々に精神を病んでいく。


一年生の一学期の時点で寮を脱走する者、退学する者は、想像以上に多い。


ただ、友紀の救いは、勉強が出来、東京の子に負けないくらい流行に敏感で、容姿が抜群に良かったこと。


先生からの信頼は厚くなるし、男子からもチェックされる。


女子からですらチヤホヤされる。


友紀は、確実にこの学校での地位を築いていき、徐々に標準語にも慣れていった。


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* 第十七話 * ~友紀の場合~ ?

5月のGWも過ぎ、高校生活に慣れてくると、友紀の口数もだんだんと増えていった。


もともと頭の良い子なので…と言ったら語弊があるかもしれないが、標準語の吸収も早かったらしい。


微妙な発音も完璧にマスターしていた。


北関東辺りになると、自分はあくまでの関東出身という意識が強いせいか、自分が思っている以上に細かい発音に訛りが抜け切れないものだ。


その点は、九州や東北くらい離れていた方が、思い切れる。


と、言葉の話はこの辺にして…。


そういう訳で、友紀はどんどんと校風にも馴染み、垢抜けていった。


寮と学校と、結局は四六時中一緒にいる者たちなので、最終的にはほぼ全校生徒の顔と名前は一致していくのだが、そのスピードにはやはり差がある。


つまり、友紀は男子寮の面々に顔を覚えられるのが目立たなかった割に早かったのである。


ついでに言えば、よほど派手じゃない限り、寮に入っていない一部の通学の生徒たちの覚えは更に遅かったりする。





さて、既に女子の中でも目立っていたような子たちは、既に男女交際が始まっていた。


早い者勝ちだと言わんばかりに、あれよあれよと男女がくっついていく様は、高1特有の勢いがあるかもしれない。


その点に於いては、友紀は遅れをとった。


まだ、そこまで恋愛には目覚めていなかったのもある。


それ以上に友紀の大人しく上品に見える雰囲気から、やや男子からは崇め奉られるような、近寄りづらく、憧れの眼差しを送るのが精一杯といった独特の壁を作られてしまった感があった。


いつの間にやら、高嶺の花扱いに勝手に格上げされてしまっていた。


それが、男子寮の中ではゲーム性を帯び、二年生や三年生からのターゲットになった。


一年生たちは、同じ部屋の上級生から「天野さんのハンカチを貰って来い」だの「部活に差し入れを頼め」だの命令されてくるのだ。


友紀は、それが嫌で嫌でしょうがなかった。


もっと普通に接して欲しいのに。


同級生の男子は、上からの命令以外滅多に話しかけてこないし、時々話せたと思えば何故か敬語だったりする。


男子は子どもだな…と少し憐れみの目で見てしまう友紀であった。





しかし、そんな友紀でも実は気になる男子生徒がいた。


この学校は、廊下やどこかで上級生とすれ違ったりしたら必ず挨拶をするのが暗黙の決まり。


友紀は男子生徒とすれ違って挨拶する時、特にニヤニヤと見られるのでこれが非常に苦痛であった。


そんな中、彼だけはクールに会釈だけして、友紀に目もくれず颯爽と歩いていったのだ。


思わず、振り返って背中を見送ってしまった程だった。


後姿が、友紀の大好きな織田裕二に似ていた。


「…かっこいい」


友紀が、ドキドキしながら同寮の先輩に探りを入れると、二年生だということがわかった。


「あー、喜田じゃない?喜田一志」


「キダさんっていうんですか?」


「うん、織田裕二っぽいんでしょ?絶対そうだよ」


友紀は、名前をしっかりと頭に入れた。


そして、どうやら同じクラスの伊達和人の部屋の上級生だという情報もゲットした。




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* 第十七話 * ~友紀の場合~ ?

とは言うものの、友紀は、他にも生徒会長がカッコイイだの、隣のクラスの誰がイケてるだの、日本史の先生が素敵だのと好奇心旺盛に他の男子をチェックしていた。


まだ、恋に恋している段階で、男女交際というものに対しても憧れはあるが、ピンと来ていない感じ。


ところで、この学校では6月末に体育祭がある。


6月も中旬に差し掛かり、応援団の練習や旗やポスターの作成に学内は活気溢れていた。


友紀たちのクラスも参加する競技の割り振りなどをして、体育祭に備えていた。


そんなに運動が得意ではない友紀は、クラス全員参加の徒競争とリレー以外は参加する競技が増えないように教室の隅で控えめにしていた。


「天野さん、他のヤツにも何か出てよ」


ついにクラス委員から声が掛かってしまい、他の生徒と一緒にあみだクジをした結果、男女混合の二人三脚リレーに出ることになってしまった。


「あー、これ、学年入り混じるんだよね。カッコイイ人と組めるといいなぁ」


「あんまり良過ぎると緊張しちゃって足もつれるよ」


「そうそう、しばらくしたら組み合わせが発表されるんじゃない?」


「友紀ちゃんが出るんじゃ、相手争奪戦になっちゃうんじゃないの?」


周りの女子はそう言って囃した。


数日後、廊下に張り出された競技の参加リストを見に行った。


誰がどの競技に出るのかというのがクラス毎、または競技毎に、全校生徒分名前が載っている。


友紀は、徒競争とクラスリレーの自分の名前を確認したあと、恐る恐る二人三脚リレーの項目に目をやった。


「あ、見て。やだ、私、5寮のマッチョな寮長さんとだ!」


一緒に見に来た同じ競技に出る鎌田さんが大笑いしながら、友紀の腕を意バシバシ叩いた。


「友紀ちゃんは…?えっと、喜田…さん?って誰」


そう言って紙面から鎌田さんが振り向くと、友紀は固まってしまっていた。


 ―― 嘘ぉ。


天野友紀と書かれた隣には、ペアとして喜田一志の名前が書かれてあった。


友紀の顔はみるみるうちに真っ赤になった。


「えー…、信じられない…」


「何、ちょっと友紀ちゃん、この先輩、誰?」


「ん、織田裕二…」


鎌田さんは、きょとんとした。


しばらく間があって。


「っえーーーっ???あの???友紀ちゃんが超クールって言ってた???」


慌てて、友紀はシーッと鎌田さんの口を覆う。


鎌田さんは小声になった。


「やったじゃん!お近づきになるチャンスだよ!」


「うん、うん」


「きゃー、嘘みたい!」


もう一度二人は、名前を確認する。


指で辿る。


天野友紀→喜田一志。


「うっわー」


思わず鼻息が荒くなる。


友紀もなんだか嬉しさが込み上げてきて、二人は手を取り合うとバタバタバタと廊下を駆けて行った。




叱咤激励!

* 第十七話 * ~友紀の場合~ ?

体育祭当日。


寮からは、ジャージ姿の生徒たちが続々とグラウンドに向かう。


通学の子たちも体育館の更衣室で着替えて、外に出てくる。


友紀も長めの髪を三つ編みにし、ハチマキをカチューシャのようにしてキュッと結んだ。


今日まで、喜田への意識ばっかり高まる日々だった。


思わず、喜田と同じ部屋の伊達にどんな人か聞いてしまった程だ。


「伊達君、喜田さんって嫌な人じゃないよね?」


「はあ?優しくて、いい人だよ。この間ジュース奢ってもらった」


開会式も終わり、続々と競技が始まる。


まずは徒競争でテンションを上げていく。


テント下にいるみんながみんなに声援を送る。


もうじき、二人三脚リレーの呼び出しが始まる。


「あ、そろそろだよ。友紀ちゃん、一緒に行こう」


鎌田さんが誘い出してくれた。


「緊張するね。なんか」


「うん、寮長さん、かなりマッチョだから汗臭かったりしたらどうしよう」


鎌田さんの心配に思わず吹き出す。


少し、気持ちがほぐれて、二人は待機場所に向かった。


指定の番号順に並ぶと、隣の列に喜田が立った。


喜田自身は、相手を誰だか把握していない様子で、ちょっと辺りをキョロキョロしていた。


「あ…、あの、喜田さんですよね。天野です…」


友紀は消え入りそうな声ながら、勇気を出して話しかけた。


「あ、はい。君、俺の相手?」


「そうです」


喜田は、それが分かるとサッと屈んで、ハチマキで自分の足と友紀の足とを結んだ。


そして、なんの躊躇いもなく、友紀の肩を抱き寄せると、位置に着いた。


観客席からは、友紀のことをファンだと公言している男子生徒からの嘆きの声が聞こえた。


「うおぉっ、喜田さんかよぉ」


前の走者のバトンが回ってきた。


「せーのっ」


喜田の掛け声で、友紀は右足を前に出した。



叱咤激励!

* 第十七話 * ~友紀の場合~ ?

「いっちに、いっちに」


支えられた肩から喜田の体温が伝わってくる。


息苦しさと高鳴る鼓動は走っている故か。


それとも。


友紀の頭はワケが分からなくなっていた。


喜田と友紀のチームは順調に次の走者にバトンを渡し終えた。


喜田は黙って、足のハチマキを解く。


「あ、ありがとうございました」


息の上がった友紀の声に、顔を上げる。


初めてまっすぐに顔を見てもらった気がする。


「あ、いや、こちらこそ」


そう言って立ち上がると、「じゃ」とアッサリ自分の席に戻っていった。


「どうだった?友紀ちゃん…」


走り終えた鎌田さんがやってきた。


「うん、…フツー」


ボー然と見送る喜田の後姿は、やっぱり織田裕二そっくりだった。






体育祭も終了し、なんだか緊張感の抜けた友紀は、喜田熱もなんとなく冷めていた。


当然の義務のように、足を結び、照れることすらなく肩を抱いた喜田。


 ―― なんか、つまんない。


そう友紀は感じた。


確かに、初めて男子に肩を抱かれてドキッとはしたけど、ときめいたのは自分だけだったみたいなこの敗北感…。


 ―― クール過ぎる…。


「うおぉ」と嫉妬の声を上げてくれた友紀ファンの男子の方が余程可愛げがあるってものだ。


 ―― 後姿は確かにカッコいいけど、まじまじと顔見たら、そうでもなかったし。


友紀は、周りにそう嘯いた。


教室の窓際でボーッとしていると、ガラっと音を立てて、伊達が入ってきた。


「天野さん、いる?」


友紀が驚いて顔を向けると、長身の伊達が大股でズンズンと自分のところへ来た。


少し顔を寄せ、小声で彼は言った。


「喜田さんが、お前に話あんだって」


「えっ?」


友紀は途端に動揺した。


「それって、どういうこと?」


「知らねーけど、部屋命令で頼まれたんだ」


伊達はニヤニヤしている。


「今日の放課後、音楽室の前の廊下に来いってよ?」


友紀の肩にポンと手を置いて、噛み締めるように喜田は言う。


「いい人だぞ?喜田さんは」


意味ありげな台詞に、友紀の顔はみるみる間に真っ赤に染まった。





叱咤激励!

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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