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* 第十二話 * ~茂樹の場合~ ③

晴海に着き、路上に車を停めて、公園のような敷地に向かって歩いていきました。


海に近いせいか風が強くて、僕達は首をすくめました。


「さみ~」


「真冬に来るところじゃないね」


そう言いながらも佑介と妙子ちゃんはずんずん進んでいきます。


佑介が振り返って僕に


「あん中入れば少しは違うんじゃねえか」


と、大きな建物を指しました。


「おう」


僕は向かい風に盾になり、郁美をかばいながら歩いていました。


「大丈夫?」


「うん」


先を行った二人が左に曲がって、姿が見えなくなりました。


「おっと、急ごうぜ」


そう言うと、後ろから軽く僕のダウンが引っ張られました。


「ん?どした?」


振り返ると、ふいに僕の唇に柔らかいものが触れました。


「奪ったりぃ~」


郁美がいたずらっ子のような顔をして、笑いました。


そして、片手でトンと背中を叩くと、突然僕を追い越して走りだしました。


「ほら、早く早く!」


僕の方を見て手招きし、Aラインのグレーのコートの裾をひらめかせて、郁美は佑介たちの元へ走ります。


何やら分からずドギマギした僕は、ちょっとだけ郁美に見惚れ、慌てて我に返りました。


「こら、待てっ」


追い付いた先には、自販でホットコーヒーを買う佑介たちがいました。


「あ、私も」


郁美が僕の分までホットコーヒーを買って、渡してくれました。


単純かもしれないけど、いいコだなって思いました。


真っ暗な階段を昇って、見晴らしの良い場所で四人でコーヒーを飲みました。


寒かったけど、あったかかったです。


「あちち」


コートの中のニットの袖を少し伸ばした両手で熱い缶コーヒーを持って、フーフーする郁美が、たまらなく可愛いと感じました。


「火傷すんなよ」


僕は思わず郁美の頭をポンポンと撫でました。


「あれれ、なんか良い感じじゃない?」


妙子ちゃんが突っ込んできます。


僕は微笑で応えました。


この子となら付き合ってもいいかなと思っていましたが、僕は年明けには東北の支社に戻らなければいけません。


遠距離恋愛をする覚悟はありませんでした。


佑介が煙草に火を付け、手摺りに寄り掛かりながら、上を向いてゆっくり煙を吐きました。


「お、今日、星すげえ」


みんな揃って夜空を見上げました。


「あ、オリオン座発見」


郁美が言いました。


そう、この空は東北にもつながっていて、同じ星空を眺めることは可能かもしれません。


だけど…。


「後藤君、今度デートしてね」


郁美がニコッと笑い掛けます。


ドキッとして、一瞬目を逸らしてしまいました。


「横浜とか…好き?」


僕はちょっとその気になって聞いてみました。


「あ~、私、横浜鬼門なんだよね~」


郁美が心底残念そうに言いました。


「なんじゃそりゃ」


思わず笑ってしまった僕は、ズッコケながらも、この時に決心したのでした。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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