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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ⑭

斉藤のメッセージを読んだ杏子は、彼に電話を掛けた。

切りたての左手首がズキンズキンと脈打つ。

痺れるような痛みに耐え、杏子は平静を装った。

斉藤はすぐに電話に出た。

「キョンか」

とても落ち着いていて、優しい声だった。

「うん、さっき浩太さんから電話もらったんだけど、なんか掛けにくくて」

「え、こっちのが気まずいんじゃないの?」

笑い声が交じった。

「キョン、ひょっとして何かやっちゃった?」

「ん…?ううん…。平気よ」

やっぱりといった感じの溜め息が聞こえた。

「自分、大事にしないとダメだよ」

「うん、わかってる」

「俺は怒ってないし、いつでも気軽にさ、何でも相談乗るから」

あまりに心の広い回答で、杏子の胸にこみ上げるものがあった。

「ううん。…私、誰よりも人を傷つけてるのに、自分が辛いことから逃げることばっかり考えてて…」

「みんな、そんなもんだよ。弱気になる時はある」

「ホントにごめん。どうお詫びしたらいいのか…」

とうとう涙が零れた。

「いいんだ、泣くなよ。気にしてないから」

これ以上、斉藤の声を聞いていたら、あまりにも優しすぎて、甘えてしまって、立ち直れそうもなかった。

罪悪感に押し潰されそうになる。






電話を切ると、ベッドに横になった。

有野からは連絡はない。

杏子からも出来ない。

死に損なって、格好悪くて、恥ずかしくて…。

このままサヨナラするのも悪くないかもしれない。

もう許してもらおうとかいう気分も失せた。

杏子は天井の明かりを見つめながら、有野への想いを封印する努力をしようと思った。

バイトもサークルも辞めよう。

今まで関わった全てを断ち切ってしまえば、少しは気持ちが軽くなるだろうか。

いつのまにか杏子は眠っていた。

眠りは杏子をそっと包んでくれた。

あんなに明日が来るのが怖かったのに。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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