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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ⑪

「一ヶ月だろ?まあ、よくもったよ、なぁ」


斉藤に別れると伝えたその二日後、有野から杏子に電話があった。


「それもクリスマスイブに別れるって、すごいよな」


昨日、バイト先で会った芳野に言ったせいだろう。


杏子に何の断りもなく、有野へ情報は流れていた。


「どう?落ち込んでる?」


有野はケタケタと笑った。


「こりゃもう、自殺モンでしょー」


有野は、いつになく毒舌だった。


「手首、サクッて感じ?斉藤君、焦るぜー」


杏子は、自分から別れを切り出したことを有野に言えなかった。


理由を聞かれたら、答えに詰まるのが目に見えていたからだ。


 ― 毅、私はあんたのことが好きなんだって、分かりすぎちゃったせいだよ。


そう言えたら、少しは楽になっただろうか。


電話の向こうの有野は、“杏子が自殺騒動を起こすくらいドラマチックに落ち込んでいる”という状況がお望みのようだった。


「そんなに落ち込んでないよ。逆になんかスッキリした」


「ふーん。つまんねえの」


そう言って、有野は電話を切った。









翌日、またバイト先で芳野に会った。


「浩太さん、毅に話したでしょ」


杏子は少し怒って聞いた。


「え?あー、バレちゃった?」


「昨夜、毅から電話あったよ。面白がってた…」


「はは、アイツらしいね」


休憩室で二人が話しているとドアが開いて、斉藤が入ってきた。


「お疲れ様でーす」


杏子の姿を認めた斉藤の表情が一瞬にして強張る。


刹那、緊迫した空気が室内に流れた。


斉藤は、二人を一瞥すると、何も言わずに通り過ぎ、更衣室に入っていった。


「おいおい、険悪じゃんかよ」


芳野が声をひそめた。


「うん…、毅の事が好きって認めちゃったからね…」


「あー、身代わりで付き合ってたって、そう思われちゃったワケか」


杏子は頭を抱えた。


「まー、自業自得だろ?」


芳野がやや辛辣な言葉を浴びせた。


 ― 元はといえば、浩太さんがけしかけたも同然なのに。


杏子は少しムッとし、ちょっとだけ涙がこみ上げた。


しかし、あの場の勢いで付き合ったのは自分の責任だ。


その後の付き合い方が斉藤に対してとても失礼だったことも杏子の非だ。


それは嫌というほど理解しているつもりだった。


だが、芳野に言われたくないという反発心も否めなかった。


「私、もう行く」


ガタンと音を立てて椅子を引く。


明らかに気を悪くした様子で、杏子は休憩室を出て行った。


残された芳野も、仏頂面で眼鏡を拭いていた。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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