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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ⑧

「キョンちゃん!」


「斉藤君…、なんで」


斉藤は立ち尽くしていた杏子のもとへ小走りで追いついた。


「芳野さんと何かあった?」


杏子は黙ってかぶりを振って、駅に向かって歩みを進めた。


斉藤もそれに続く。


「今ね、“キョンは、斉藤が好きなんだとよ”って、芳野さんに無理矢理店追い出されてきたんだ」


「ええっ?」


思わず振り返る。


「サークルの皆に大発表してたよ」


杏子はガックリとうなだれた。


 ― ということは、毅もそれ聞いたんだ…。


二人は黙々と歩いた。


駅への階段に差し掛かろうという時、ふいに斉藤が立ち止まって、言った。


「いいよ、俺」


「え?何が?」


「付き合っても」


「へっ?」


杏子は素っ頓狂な声を上げて、階段をひとつ踏み外した。


慌てて、斉藤が支える。


二人とも耳まで真っ赤になった。


「俺のこといいと思ってくれてるなら、付き合ってもいいよ」


どうにも上から目線なのが気にはなったが、杏子も勢いで返事をした。


「じゃ、そうしよっか」


そういうつもりはなかった。


好意は持っていたけど。


あくまでも、杏子が好きなのは、振り向いて欲しいのは有野毅で。


斉藤でも、芳野でもなかった。


だけど、斉藤とだったら、付き合ってみてもいいかなと思う。


なんとなく、変な始まり方ではあったけど。


ホームに着いて、斉藤がフフっと笑った。


「じゃ、そういうことで、よろしく」


「うん…、よろしく」


杏子も笑った。


「でも、今日は…、このまま帰るね」


独りになりたかった杏子は、斉藤と逆の列車に乗った。


見送る斉藤の顔が、窓の外に流れ行く景色と混ざって、過ぎていった。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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