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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ⑥

「斉藤…くん?手…」


杏子の手を握っていた斉藤の手がパッと開いた。


「ごめん」


二人は、サークルの輪を少し離れて話をした。


「いつも…、こんな感じなの?」


斉藤が杏子に尋ねた。


「なんか、辛そう。見てて痛々しい。キョンちゃんがいじられキャラにも思えないし」


「はは…。痛い?私?」


「いや、そうじゃなくて。有野君がひどすぎるし、周りの皆もフォローしなさすぎっていうか」


「そんなことないよ。好きでこうしてるようなもんだし」


「辛かったら、言いなよ。俺でよければ力になるよ」


斉藤は優しい言葉を掛けてくれた。


日常、有野の毒舌にさらされている杏子の心にその言葉はスッと入ってきた。


なんだか、心のサプリのような、そんな効き目だった。







紅葉狩りから程なくして、サークルの飲み会が開かれた。


「飲み会のあと、いつも帰れなくなるから、斉藤君ちに行ってもいいかな」


「ああ、構わないよ」


あの日から、杏子は何かあると斉藤に話をしてきた。


電話だったり、ファックスだったり、バイトの休憩中だったり。


二人の距離は急速に近づいた。


同時に、有野と斉藤の縁も深まり、サークルはもちろん、3人で遊ぶことも増えた。


有野への片想いに疲れた杏子には、格好の癒しの存在だった。


すっかり斉藤の厚意に甘えていた。


居酒屋の座敷に居座ったサークルの面々は、もうすっかり出来上がって、大いに盛り上がっている。


杏子は、飲み会の席で隣になった芳野にポロリと漏らした。


「私…、斉藤君のこと好きになれるかもしれない…」


「え?」


芳野は驚いた表情で、杏子の顔をまじまじと眺めた。


「本気で言ってんの?」


「んー、このままいけばね。なんか、心変わりできそうな気がしてる」


杏子がグイとグラスをあおる。


「あんだけ有野に振り回されてるからな…、わかるけど。でも、単に楽だからじゃないの?」


「どうだろ」


グラスを置くと同時に、ふっと杏子の視線が有野に注いだ。


有野は、サークルの女の子にふざけて抱きついて、腰を振りながら嬌声を上げていた。


ぐにゃりと杏子の表情が歪んで、目が泳いだ。


芳野が気の毒そうな顔をした。


「ちょっと席外すか」


そう促すと、芳野は杏子と共に席を立ち、店の外に向かった。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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