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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ⑤

天高く馬肥ゆる秋。


青空に、滝に、湖に、映える紅葉。


紅葉狩りにはうってつけの好天に恵まれ、サークルのメンバーたちも上機嫌だった。


駅前の蕎麦屋で遅い昼食をとっていると、杏子に芳野が話しかけてきた。


わざとなのか、温かいお蕎麦の湯気で曇った眼鏡を拭き拭き、重たくならないように。


「大丈夫か?お前、無理してるだろ」


芳野は、杏子の有野への気持ちをよく知っている。


いつも相談しているからだ。


「え?平気よ。今日は、いつもより楽しいくらい。やっぱ斉藤くんいるからかな」


「随分、気が合うみたいじゃない」


「気が合うって感じではないけどー、うん、まあ、連れてきてくれて浩太さんありがとって感じかな」


斉藤の存在のお陰で、有野との確執も穏やかに済ませられていた。


確かに無理はしていたが。


でも、気が立っている時の有野には手が付けられないのだ。


有野は杏子には他の人より甘えてくる。


だから、些細な言葉の刃が真剣なのだ。


油断すると心を切られてしまう。


だけど、そんな脆い有野を一番分かってあげたくて、そばにいてあげたいと願う杏子もまた真剣なのだった。


お互いが寄り添いたくても、近づくと切り合ってしまう。


傷つくことが分かってても、杏子は有野を見捨てられなかった。


それだけ心の闇が深いのを知っていたから。


世間では、それを【共依存】と呼ぶことなど、杏子は知る由もなかったが。


 バッシーン。


「ッたっ!!」


有野が突然杏子の頭を後ろから持っていたカバンではたいた。


「こら、毅っ!」


芳野が見かねて突っ込む。


「のんびり食ってんじゃねえよ。行くぞ」


「終わってるわよ。痛いなー」


キャハハと有野は笑った。


「欲求不満女が男つかまえて舞い上がってんじゃねえぞー」


「どっちが欲求不満だ、バカ」


大丈夫?と気遣う斉藤に杏子はすかさずフォローを入れる。


「気にしないで。毅、寂しがりやなのよ。ごめんね、変な風に言われちゃって」


いや、と斉藤は先に店を出て行った有野の背中を見送った。


自然と斉藤が杏子の手を握っていた。


 ― ちょっ…。


ドキン…。


杏子は、振り払うことも出来ず、俯いてしまう。


「行こう」


斉藤は、強引に杏子を引っ張って店を出た。


 ― 私、同情されちゃったかな…。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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