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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ④

有野と斉藤は、既に親交を深めているようだった。


昨日の有野との喧嘩で、少し気まずい杏子は有野と同じスペーシアの個室に乗ったものの、黙っていた。


「キョンちゃんは、あんまり喋らないんだね」


斉藤に話しかけられて、杏子は曖昧に笑顔を返した。


「こいつ、いつもこんな感じ。ブスっとしてるんだよ。本当にブスだけど」


有野が混ぜっ返す。


「そんなことありませんー。毅がいるから喋ってないだけですー」


「お前なー、みんなで遊びに来てんのに、個人的感情持ちこんでんじゃねえよ」


「はあ?昨日ワケ分かんない事言って、喧嘩吹っかけてきたの自分でしょうよ」


「うるせ。お前がそんなだからだろ」


「あーあーあー。やっぱり来るんじゃなかった。もっと思い切って寝坊すりゃ良かった!」


有野と杏子のやりとりに斉藤はポカンとするばかり。


他のメンツはニヤニヤしているだけ。


「斉藤くん、大丈夫。こいつら、いつもこうだから。ほら、気にせず飲もうぜ」


芳野がとりなした。


有野がホッとした表情で、渡された缶ビールを受け取った。


杏子は“斉藤は大人だな”と思った。


 ― 外見もまずまずだし。賢そうだし。仲良くしとこ。


杏子は、そう考えて、有野をわざと押し退け、斉藤の隣に座った。


「斉藤くん、カンパーイ」


有野は含んだ笑みで杏子を見た。


「何よ」


「いーえー、いいんじゃなーい?ラブラブでー」


「毅、ほんっとムカつく!」


憎たらしい言い方で杏子を茶化す有野の相手をするのはやめた。


今日は、そのお言葉通り、斉藤と一日過ごしてやろうじゃないか。


心の奥がチクリと痛みながら、憎まれ口しか叩けない杏子も有野も、自分自身の気持ちが繊細過ぎて、持て余していたのだった。


言い合ってばかりで最後に傷つくのなら、今日はいつもと変えて、相手をするのはやめよう。


有野への恋心がなくなって、気持ちが斉藤に移ろえば、それはそれで大変望ましいことなのだ。


「斉藤くん、あとで一緒にボート乗ろう」


杏子は思い切って斉藤を誘った。


「いいけど…、有野くんはいいの?」


「大丈夫よー。関係ないからー」


大袈裟な笑顔で応える。


「ひゅーひゅー」


周りの皆がすかさず囃し立てる。


杏子は、すっと斉藤の腕をとって、宣言をした。


「斉藤くんはキョンがお預かりいたしマース」


ドッと席が沸く。


向かいの席にいた芳野は、そんな杏子を複雑な思いで見ていた。


誰にもわからないように、眼鏡の奥から…。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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