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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ③

ちょうど二ヶ月前、杏子の参加しているイベントサークルの皆十数名で、紅葉狩りに行った。


特急スペーシアの個室で向かった先は日光。


いろは坂。


華厳の滝。


中禅寺湖。


あの日の出会いによって、杏子の運命は少し変わった。






杏子はサークル内で有名になってしまうほど、有野に片想いしていた。


有野も気持ちには気付いていたようだが、一切それに対しては我関せず。


恋愛事情には当たらず触らずという姿勢を貫いていた。


そのくせ、杏子とは馬が合うらしく、どうしても一緒にいることが多くなる。


杏子にとっては蛇の生殺しもいいところだった。


ただ、有野は少し子供染みたところがあって、気に食わないことがあるとすぐに吹っかけてくる。


そのせいで、杏子と有野の間には喧嘩が絶えなかった。


なんだかんだと気が合うのである。


たとえ、それが負の力だとしても…。


そして、この日の紅葉狩りの前夜にも、電話口で二人は大喧嘩をしたばかりだった。


もちろん、その喧嘩を引きずっての参加である。


しかも、喧嘩のせいで紅葉狩りなどどうでもよくなった杏子は、まんまと寝坊した。


今朝は、サークルの名誉部長である芳野に電話でたたき起こされたのだ。


お陰で、浅草でスペーシアに乗り損ね、大急ぎで北千住まで母親に車で送ってもらった。


文字通りギリギリセーフで杏子はスペーシアに間に合ったのだった。


「おー、おはよう。よく間に合ったな」


芳野がワシワシと杏子の頭を撫でた。


「浩太さん。ごめんなさい…。つい寝坊しちゃって…」


チラリと有野を見たが、有野はそ知らぬ顔で車窓の外を眺めていた。


「まー、お前はネタに事欠かねえな。一人ひとネタのお約束は達成したな」


みんながドッと笑った。


このサークルのメンバーは、大体同じ大学だったり、バイトだったり、友達が引っ張ってきたり、特に制限はなく、母体の幅は広い。


芳野は、杏子と同じ文学部の先輩であるが、とっくに卒業した4歳も上の大先輩である。


ただ、杏子と芳野は池袋にある屋内レジャー施設でバイトをしているのだが、そこでは同期だ。


「キョン、こいつ、先週から遅番に入った斉藤」


芳野が突然紹介したその人が、斉藤忠則だった。


「工学部の斉藤です。よろしく」


「え?遅番て?」


「うん、俺のアトラクの遅に入ってきてさ、聞いたら大学も一緒っていうから、今日のにも誘ってみた」


さわやかな笑顔の斉藤はにこやかに杏子に向かって会釈した。


「そう…。よろしく。木村杏子です」


同じ大学の工学部ということだったが、文学部とはキャンパスが違うので、同い年らしいが全く面識はなかった。


ちなみに、有野は隣にある音楽の専門学校の学生で、杏子の1歳下。







杏子は、その日、何かの意図を感じていた。


サークル内みんなで担いで、斉藤と杏子をくっつけようという動きがある。


それには、当然、有野の意向が大きく関わっていることも、杏子は勘付いていた。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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