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* 第十壱話 * ~杏子の場合~ ②

母親の絶叫を聞いて、1階にいた父親は異変を感じていたようだ。


 TREEEE,TREEEE…


電話に出たらしい父は、なんとか理由をつけて切り、1階から駆け上がってきた。


自室に戻った杏子と母親の姿を見た父親は絶句した。


「お父さん、見てよ、この手!杏子ったら、バカな真似を…」


母親は怒りながら、杏子の左手首の手当てをした。


そして冷たい口調で言い放つ。


「みっともないから、病院なんか行かせないからね」


父親が杏子を抱え、そっと背中を撫でた。


「そんな傷、ほっといてもくっつくんだから…」


母親はそのまま階下へ降りていった。


杏子はボロボロと涙を流した。


泣けなかったのに、父親の胸を借りて、やっと泣くことができた。


「何やってんだ?辛いことがあったならいつでも相談しなさい」


父親の温かい手が杏子の頭をポンポンとすると、杏子の中でたまらなく大きな罪悪感が沸き上がった。


「…ごめんなさい」


「お前、芳野さんて知ってるか?今、電話があったけど…」


芳野浩太。


同じバイト先であり、サークルの先輩だ。


おそらく、有野毅から芳野へ連絡が行ったのだろう。


杏子は、知っていると頷いた。


「娘さんを出してくださいって偉い剣幕だったけど」


娘の部屋に長居するのに気が引けたのか、父親はゆっくりと立ち上がった。


「お前からちゃんと連絡しろよ。心配してたぞ」


そう言って、部屋を出て行こうとして、もう一度ドアを開けた。


「一人で大丈夫か?もうしないよな?」


父親はそう確認し、出て行った。


一人になった杏子は、ベッドに仰向けになり、呆然と包帯でぐるぐる巻きの左手首を眺めた。


 ― どうしよう…。死ねなかった…。


また大粒の涙がこみ上げてくる。


 ― 毅に…、許してもらえない…。


頭の中は他の死ぬ方法でいっぱいだった。


やっぱり飛び降りるべきだったか。


それとも…。


 ジ・ジーッ。


杏子は突然の音にビクっと飛び起きた。


部屋のファックスが受信された。


数日前、クリスマスイブの日に別れた斉藤忠則からだった。


杏子は、吐き出される紙を見つめた。


すべて繋がっている。


有野…、芳野…、斉藤…。


彼らは繋がっている。


『キョン、大丈夫か?何かあったんなら、電話しろよ。  斉藤。』


杏子は、斉藤に電話しようと思った。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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