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* 第十話 * ~武彦の場合~ ③

あいにくの雨。

しかもどしゃ降り。

まあ、台風だったんだが。

でも、予定通りに、俺たちは品川駅に九時に待ち合わせていた。

30分ほど遅れて高輪口に現れた俺を見た妙子は、一瞬「あれ?」という表情を見せた。

あの顔、何だったんだろう?

今になって思い出すと気になるが、あの時の俺は、仕事が計画通りに終わらなかった事とこの豪雨に少しイラついていたから、あまり気にも留めずにいた。

挨拶もそこそこに、早足で横断歩道を渡った。

妙子はピシャピシャと足音を立てながら、小走りで遅れまいと俺についてくる。

あまりの強風で傘も大して役に立たない。

大粒の雨を全身に浴びながら、俺たちは新高輪プリンスホテルに向かった。





びしょ濡れで、とあるバーに入ると、店員が気を利かせておしぼりを渡してくれた。

外からの客は俺たちだけ。

かなり離れた席に宿泊客らしき数名がいたが、天気のせいか、ほぼ貸し切りのような店内だった。

晴れていれば夜景が売りであろう大きな窓辺に沿ったソファーに案内される。

窓全面にビシバシと叩きつけてくる雨音が印象的だった。

稲光が走り、雷鳴に窓が震える。

「すごい景観…」

妙子は、放心していた。

やっと腰を落ち着けられて、一杯飲むと、悪天候も強行スケジュールも仕方のないことなんだと割り切れて、俺のイラつきも治まった。

酒もいい感じでまわり、冗舌になる。

妙子は、いちいち俺の話に感心してくれた。

俺に心底傾倒しているのがよく分かる。

あの子の目は、恋する瞳だったと自負する。

調子に乗って、こんな話もしたな。

大学の時、俺は野球部で、ベストナインに選ばれた程、活躍した。

大きな試合でホームランを打った時、スタンドにいた当時の彼女にだけ向けてガッツポーズをして、ダイヤモンドを一周したとか。

合コンで知り合った美人だけどすげえ高飛車な女がムカついて、そいつの顔に水ぶっかけて、財布叩きつけて、店を出ていった話とか。

ちなみに後日、その女に「叱ってくれた人は初めて」だとか言われて、コクられたけど、振ってやった話とか。

ね、俺、格好良いだろ?

そんなの満載で話してたら、なんかもう目がハートなわけよ。

そんな素敵な貴方が私なんかと一緒にいていいの?ってな感じだったんじゃないかな。

私って選ばれた女~みたいな?

俺としては、あんまり従順過ぎちゃうとつまらないんだけど。

もっと突っ張れよって思う。

ひと通り、俺が話したいこと喋って気持ち良くなった頃、バーを後にした。






エレベーターが昇ってくる間に、やっと俺は会って最初のキスをした。

妙子は、待ってましたとばかりに、腰砕けになってた。

このまま新高輪の部屋に泊まると思ってたみたいだけど、近くの別のホテルに移動した。

そっち、うちの会社と提携してるから、いわば節約。

もう落ちてる女に無駄な投資をする必要はない。

ま、流石に今度はタクシーで移動したけど。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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