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* 第九話 * ~妙子の場合~ ⑥

近くの路上に止めてあった久保の車に急ぐ。


「家まで送ってくよ」


久保はそう言って、助手席のドアを開けてくれた。


「あ、でも、うちこの辺からだと遠いから…」


「まあまあ」


断ろうとした妙子を久保はグイと押し、車に乗せた。


妙子の自宅は、23区内ではあるが、東部下町に位置するので、ここ代官山からはかなり距離がある。


飲酒運転なのも気になった。


「久保さんは、どちらにお住いなんですか?」


「俺は、横浜だよー」


ますます、気が引ける。


エンジン音を響かせた。


しかし、少し走って、久保は車を路肩に寄せた。


「やっぱりちょっと酔ってるな。悪いけど、ちょっとだけ休ませて。ここ、分かる?」


久保は窓の外を指差した。


「え、墓地…?」


青山霊園の桜並木の下だった。


真夏であるから、もちろん桜は咲いていない。


「俺、ここ好きでさ、よく車停めて寝るんだよね」


確かに、桜が満開の頃は、なかなかのスポットである。


「じゃあ、せっかくだから怖い話しよっか」


「えー?あんまり得意じゃないんですけど…」


墓地近くでお約束のように始まった久保の怖い話…。


妙子は、やっぱり乗り込むんじゃなかったなぁと思っていた。


「宋君の話、知ってる?」


久保は嬉々として話出した。


「宋君が友達みんなと肝試しに行った夜、部屋で寝てたら、金縛りにあって…。肝試しの場所から霊を連れてきちゃったのかなーって思ったんだよ」


しんと静まり返った暗い窓の外では、ほんのりと点る街灯に蝉がぶつかってジジジと音を立てる。


「霊の姿もしっかりと見えるんだ。足元から現れた霊が下からひたひたと宋君の身体を伝ってくる。で、宋君を自分の仲間にしたいって、耳元で囁くんだって」


「うん…」


「お前に取り憑きたいって…」


ゾクっとして、妙子の身体は少しこわばった。


「こんなに近くに霊の顔があるんだぜ」


久保はそう言って、運転席から乗り出し、隣の妙子の鼻先まで自分の顔を寄せた。


「怖い…」


そして、そのまま久保の唇が妙子の唇に軽く触れた。


唇を離すと、二人は目を合わせた。


久保がニッと笑う。


妙子はどうしていいか分からなくなって、目を伏せた。


「で、昼間、肝試しのときに宋君の友達から呪文を聞いてて、これを唱えれば金縛りが解けるんじゃないかって」


久保が妙子の耳元で呪文を唱えた。


「ソウナカンマソウナカンマ…、妙ちゃんも言ってみて」


「ソウ…ナカンマ…」


「反対から言ってみ?」


「マ…カナ、ウ、ソ…?」


妙子は気付いて思わず笑ってしまった。


「真っ赤な嘘って!」


「もー、久保さーん、怖かったのにー」


別に話自体は怖くもなかったが、妙子は精一杯のぶりっ子で久保の胸にグーで軽く手をあてた。


久保の手が妙子の頭をクシャっと触る。


その手が頬まで降りてきて、また唇が触れた。


久保の舌が、妙子の歯を押し開ける。


 ―― 私、なんで、受け入れてるんだろう…。


そう思いながらも妙子は、さっきのレストランのテーブルの下で、膝が触れ合っていたあの時点から、こうなることは分かっていた。


久保の手が、妙子の大きく開いた襟ぐりから中に入ってきた。


頭の隅では服が伸びてしまうと考えつつ、その手が妙子の胸の固い先端にあたると、久保の口の中で思わず声が出た。


「かわいいよ…」


二人はしばらくキスを続ける。


「これ以上…、ダメ…」


妙子はデニムのファスナーにかかった久保の右手を押さえて、やっとの思いで口にした。


少し息が上がっている。


「…行こか」


久保が態勢を整えて、ハンドルに手をかけた。


車はゆっくりと進みだした。


「道案内、してね」


妙子は走り行く車窓の外を眺めながら、上の空で返事をした。


 ―― あんなに嫌だったのに、なんで…?


自分のしたことが信じられなくて、妙子はずっと自問自答していた。


 ―― 今、私は久保さんに抱かれたいと思ってる…。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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