FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

* 第九話 * ~妙子の場合~ ③

ガヤガヤと妙子たちのテーブルにやってきた男性たちは、みな電報堂の関係者ではなかった。




旅行代理店、中小広告代理店、保険会社、某球団の親会社など、名前を聞けば、まあ知らないことはなかったが。




実は、この会社バラバラの皆さん方は、全員出身大学が同じであった。




つまり、電報堂のどなたかが人数集めに、母校から人をかき集めたというわけだ。




彼らは、有名私立大の元野球部OB達。




あの六大学野球に参加できていた大学である。




ひとりは名前も聞いたことがなかったが、一応元野球選手でもあった。




聞くと、超大物名物監督とウマが合わず、一線を退いて、運営側に回ったらしい。




妙子が期待していたメンツとはちょっとかけ離れていたが、隣の潤奈が彼らのそんな体育会系裏話を聞いて楽しそうにしていたので、まあいいかと妥協していた。




もう少しスマートな雰囲気の人だったら万々歳だったのにと思いつつ、実際、同じ釜の飯を食らってきた連中の会話は笑いという面ではとても楽しかった。




ちらりと他のテーブルを伺うと、杏子をはじめ、同僚たちはカクテルに頬を染めながら、それなりに健闘している様子だった。




 ―― 恋を求めるには、このテーブル、失敗だったなあ。




妙子がそんなことを考えていたら、突然目の前が暗くなった。




「お・ま・た」




「おー、久保、やっと来たか!」




どっと周りが沸く。




妙子は、久保と呼ばれた男性に後ろからいきなり目隠しをされていた。




急に周りが見えなくなって、何がなんだか分からず、足をバタバタさせると、ようやく久保の手が離れ、そのまま妙子の隣にどっかりと腰をおろした。




「お、当たりじゃん」




久保が不躾に妙子の鼻の先を人差し指で指した。




「かわいい、かわいい」




久保は満足げに頷き、ニッカリと笑った。




 ―― な、 何、この人!?




妙子は驚いて声も出せなかった。




周りから声があがる。




「妙ちゃん、そいつ、俺らの後輩で久保っての」




「そ。よろしくどうぞー」




軽いノリで、久保は妙子に名刺を差し出した。




目を落とすと、“ディレクター:久保 武彦”とある。




テレビの子会社でも制作会社でもなく、れっきとした某テレビ局の名刺であった。




肩書きは“ディレクター”。




 ―― へえ、こんな若そうなのに、なかなかの肩書き持ってんじゃん。




妙子は少し感心はしたが、あまり食指は動かなかった。




それもそのはず、いでたちはTシャツ。




妙子より、せいぜい2、3歳上だろうっていうのに、腹出過ぎ。




しかも、慣れる慣れない以前から、「なんでやねん」と容赦ないツッコミが飛んでくる。




久保がやってきてから、まだ妙子のスプモーニはほとんど減っていないのに、既に五回も頭をはたかれて、不快感だけは最高潮だった。




 ―― 信じられない。なんなの、この失礼な男。




あんまりにもムカついたので、妙子は料理を取りに行くフリをして席を立つと、二度とさっきのテーブルには戻らなかった。




潤奈が慌てて妙子に駆け寄ってきたが、気にしないでと追い返した。




「大丈夫、潤奈は楽しそうだから、あのままいなよ。私は、あの人ちょっと無理だから」




その後、杏子のいるテーブルや他のテーブルに抜かりなく顔を出し、大手企業の名刺をゲットし、ほくほくしているうちにパーティーはお開きになった。






人気ブログランキングへ

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

検索&ランキング
参加しています。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ
よろしくどうぞ。
カテゴリ
最新記事
Twitter
リンク
このブログをリンクに追加する
MicroAd
CHECK IT!
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。