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* 第八話 * ~和人の場合~ ③

去年…、チューリップが次々に咲いていた頃。




つまり、寮に入りたての頃。

寮内には数々の悪しき風習や悪戯がある。

上級生を笑わせるためだけに宴会芸を何日も考えて披露したり、戸板に半裸で縛り付けて立てかけられたり、女子寮に向かって山彦よろしく愛を告白させられたり、鞄を開けたら中身が全部すり替えられていたり…。

和人もまた、入寮当時に洗礼を受けた一人だ。

和人への上級生からの司令は、誰でもいいから同じクラスの女子にコクれ!

女子が苦手な和人は頭を抱えた。

上に逆らったら、これからの寮生活が辛くなる。

だったら…。

和人は馬鹿正直に、同じクラスの中で一番目立っていた女子に狙いを定めた。

それが、鵜飼麻弥子だった。

彼女は寮生ではなく、通学生。

そこは敢えてそうした。

寮生同士だとまた面倒な司令を出されかねないからだ。

麻弥子は、一年生だったにも関わらず、堂々と校則違反をおかすような子だった。

入学式の時は確かにストレートだったサラサラの長い髪は、早速くるくるとウェーブがかかっていた。

ピアスの穴もいくつか開いていた。

流行り始めたスーパールーズソックスもいち早く履いていた。

指定の学生鞄はアニエスbやクーカイのバッグに替わっていた。

寮の女子たちには出来ないお洒落をどんどん取り入れているから、とても目立つし、垢抜けてもいた。

性格も明るかったし、和人でさえも話しやすい子。

そんな麻弥子に和人は司令通りにアプローチした。

「俺で良かったら付き合ってほしいんだけど」

いわゆるクラスの一軍に属する子だったから、きっと他校あたりに彼氏もいて、すぐ断られるだろう、そんな見込みだった。

ところが、麻弥子は頷いたのだ。

「アタシなんかでよかったら」

そう言って頬を赤らめ、俯いた。

和人は混乱したが、寮は大盛り上がりだった。

とてもじゃないが、上級生からの司令だなんて言えなかった。

この日から、二人は付き合いだした。

と言っても、寮生と通学生。

せいぜい授業中に書いた小さな手紙を渡したり、放課後に少し話したり、夜に電話するくらいのもの。

案外、麻弥子が積極的で一生懸命和人に尽くしてくれた。

だけど、和人は照れもあり、わざわざ外出届を提出してまでデートの時間を作ろうなどとはしなかった。

ただ、だんだん麻弥子の中身を知るごとに、和人なりの興味も湧いてきていた。

はじめは麻弥子からばかりだった電話も和人から掛けるようになった。

何度掛けても話し中でヤキモキした日もある。

あとから、お互いが同じ時間にかけ合ってしまっていたなんて理由が判明してホッとしたり、少しずつ麻弥子に心を開き、恋愛感情を持ちつつあった。

そんな初々しさのまま、夏休みに入った。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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