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* 第八話 * ~和人の場合~ ②

残り少ない休み時間。

和人は渋々廊下に出た。

キャーと軽い歓声。

二人の女子が和人の前に歩み寄った。

一人は女子バスケ部の子。

その子が後輩を連れてきたようだ。

「伊達くん、うちの寮の一年」

真っ赤になっている一年生の背中がグイと押された。

「あー、こんちは」

和人は頭を掻いた。

廊下に向かって、教室中の視線を感じる。

誰がどう見ても目立つシチュエーション。

 ― もう少し考えろよ。

恥ずかしさにちょっと苛立つ。

「あの、お誕生日おめでとうございますっ。これ、プレゼントです」

顔を真っ赤にしながら、やっとそれだけ言って、両手で和人に袋を押しつけると、一年生は風のように去っていった。

「あ、ちょ、…じゃあ、そういうことで」

連れてきた女子も、どういうことかわからないコメントを残して、一年生を追っていった。

「ひゅー、ひゅー、伊達ちゃん、やるねえ」

有野の冷やかしがますます周りの注目を引き付けた。

「うるせ」

和人は有野に一発蹴りを入れ、教室に戻った。

 ― 名乗りもしねえし、こっぱずかしいし。

今ので机の中のブツも持ち帰りやすくはなったが、次々に有野が持って来る話に気が重かった。

「放課後、部活行く前でいいからさ、ちょっと顔かしてよ」

「有野、お前、金でも貰ってんじゃねえの?」

「いいじゃん、誕生日とバレンタインはお前の独壇場なんだからさ~」

有野はヘラヘラと逃げた。






そもそも、女子の恋心ってのは一体何なんだ?

ろくに話したことも、存在すら知らなかったのに、「ずっと好きでしたぁ」だの言われる。

今年のバレンタインの時もそうだった。

過去に一言交わしたかどうか程度の他のクラスの女子が、前日に寮にまで電話を掛けてきた。

寮の電話は掛かってくる時間が決まっていて、電話当番の一年生が出る。

「伊達先輩、女性の方からお電話です」

こうして受ける電話は恥ずかしさと優越感でくすぐったい。

しかも、寮内ですぐさま噂になる。

「朝練の前に渡したいので、7時に体育館の前に来てくれる?」

確か、通学生の子だ。

じゃないと、そんな時間に融通が利かない。

寮に戻って開けたら、見た目もひどい手作りチョコケーキ。

 ― げ。気持ち悪くて食えるかよ。

申し訳ないが、少しも口にせずに捨てたのを覚えている。

ある意味、強烈過ぎて、その子だけは名前を覚えてしまったくらいだ。





唐突に有野の声が脳天に響いた。

「あ、そうそう、鵜飼さんが」

和人がガバッと顔を上げた。

「うっそーん、なんでもないって」

有野がおちょくる。

和人は慌てて、誤魔化すように机を探った。

耳まで赤い気がした。

 ― 鵜飼麻弥子。

和人が唯一付き合った元カノだ。

お互い好きだったはずなのに、何故か別れてしまった。

和人の左足首には、ミサンガが三本ある。

一本は、麻弥子の作ったミサンガ。

別れても切れるまで外さないのは、迷信以上に、麻弥子へのささやかな意思表示だった。

麻弥子にだけ判ればいい、…そんな和人の本当の気持ち。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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