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* 第六話 * ~マリアの場合~ ?

その夜、隆徳はいつもより少しだけ早く帰ってきた。


まだ、子どもたちも起きていた。


普段は眠ってしまってからの帰宅なので、夜にパパに会えた長男のテンションは一気に上がる。


「パパー、おかえりー」


「ただいまー。いい子にしてたかあ?」


頭をわしわしと撫でてから、隆徳は長男を抱き上げた。


 ― こんな光景、久しぶりに見たなぁ。


マリアは、目を細めた。


「パパぁ、ママね、今日あんまり元気ないんだよ」


「そうなの?お腹が痛いのかな」


多分、隆徳はギクリとしたに違いない。


昨晩のあれは夢ではなかったと実感しただろうから。


隆徳は、珍しく晩酌もせずに、既に冷たくなってしまった夕食を食べていた。


「ねえ、パパ」


まとわりつく長男に、優しく声をかける。


「おい、もう9時過ぎてるんだぞ。お布団に入らないと、ママ困るよ」


「えー、だって、やっとパパに会えたのに~」


「行きなさい。日曜日には一緒に遊べるから」


本当か嘘か分からない約束を長男は信じて、布団にもぐりこんでった。


マリアも一緒に寝室へ行き、隣で子どもたちを寝かしつけようと横になった。


お腹の下の方を軽くポン、ポン、と叩いていると、長男は健やかな寝息を立てて、眠りについた。


眠った雰囲気を察知するのか、下の子もいつのまにか眠っている。


マリアは大きく深呼吸しながら、布団の上で伸びをした。


そのままボーッと天井の小さな明かりを見つめていた。


隣の部屋からは微かにカチャカチャと食器の音が聞こえる。


隆徳と顔を合わせたくなかった。


どうしたいのかまだ考えもまとまっていない。


スッと部屋に一筋の光が入った。


「マリア…」


小声で、隆徳が呼んだ。


 ― 話をする気なんだ…。


マリアは重い腰を上げた。







ダイニングテーブルに向かい合わせに座った。


食べ終えた食器は片付けてあった。


珍しいことをするものだ。


「さっき、別れてきたよ」


隆徳は切り出した。


「元々、相手も俺に妻子がいることは知っていたから、納得して別れてくれた」


「…彼女として、付き合ってたんだ?」


隆徳はおもむろに煙草に火をつけ、紫煙をゆっくりと吐き出した。


「本気だったんじゃないの?」


「違うよ、家族は家族として愛しているし、ただ…」


隆徳は言葉を切った。


「…癒しが欲しかったんだ」


マリアの頭ににカッと血が上るのが分かった。


「お前は、子どもにかかりっきりで、帰ってきても寝てて、会話もなかっただろう」


「デートしてたから、帰りが遅かったんじゃないの」


膝の上でギュッと拳を握った。


汗をかいている。


「かかりっきりって…、あなたが子育てに何にも関わらなかったんじゃない。一番手のかかる、一番私が不安定な時期に…、あなたは、他の人と楽しい時間を過ごしてたんでしょう?」


一気に言った。


「俺だって、疲れてるんだよ。だけど、労いのひとつもない」


煙草は隆徳の手元でどんどん灰になっていった。


「悩んだよ。よそうと思った。早苗にも相談したんだ…」


 ― なんですって?


マリアは顔色を変え、隆徳を睨んだ。


「どういうこと?早苗とも二人で会ってたの?」


「うん、家に行って、この話をした。…気になっているコがいることも、家でのことも…」


「そしたら?」


「いいんじゃない?って。仕方ないよって言われた」


マリアは立ち上がった。


「ちょっ…!…そんなさぁ、不倫を勧める友達って、本当に友達って言えるのっ?」


隆徳に近づいて、両手で力いっぱい押した。


そのまま恥も外聞もなく、髪を振り乱して、何度も何度も隆徳の胸を拳で叩いた。


「どうして、…どうして、そんなこと早苗に相談したのっ」


ちくしょう、ちくしょう、ちくしょう。


 ― こんな侮辱ない。早苗はきっと、ほくそ笑んでいたに違いないわ。


こんなに怒りに任せた行動をしたのは初めてだった。


「やめろよ」


隆徳はマリアの両腕を掴んだ。




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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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