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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ⑬

 ―― そんなんだから、簡単に死んじゃうのよ。


慶子は、自分で言おうとしたことに恐れおののいた。


 ―― なんてことを…。


「ご、ごめんなさい…」


慶子が慌てて、詩真の腕から手を離す。


詩真は、ずっと黙って泣いていたが、目だけはじっと慶子を睨み続けていた。


鎮静剤を持った医師がやってきた。


「先生、私、大丈夫です。冷静です…」


そういう詩真に、医師が静かに首を振った。


「皆さん、ここは病院ですから。ちょっと考えてください」


警察官が口を挟む。


「出来れば、今夜はもうお引取りください」


処置を済ませると、医師はそう告げ、部屋を出て行った。


「さ、行きましょう」


警察官が、慶子を促す。


慶子も頷き、輝元と詩真にもう一度頭を下げた。


「申し訳ありませんでした…」


消え入りそうな声だった。


「慶子先輩」


詩真が止めた。


「美園のこと、死んで当然って言おうとしたんですか?」


慶子は怯えた目で詩真を見た。


「自分から彼氏を奪った元凶なんか、消えたってどうってことないって。ざまあみろって?」


慶子は必死でかぶりを振って、後ずさりした。


「違う、違うの…」


今日初めて、輝元から娘の死を知らされた時、ざまぁと思った自分を消し去ってしまいたかった。


こんな形で、自分自身の心の奥底に眠った本音を知るなんて。


詩真に訪れて、慶子に訪れてくれない、女性としての幸福。


それが、積年の恨みと共に、ねじれにねじれ、愛する人の子どもを産んだ詩真を妬んでいる。


人の命をこんなに簡単に否定できる心が自分にあるなんて。


こんな悪意に満ち満ちた不健康な心身に、コウノトリなど訪れるはずもない…。


慶子は、静かに病室を去った。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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