FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

* 第五話 * ~潤奈の場合~ ③

その日一日、潤奈は仕事が手につかなかった。


朝の通勤中に電車内で、【HARU】にメールをしたのだ。


職場内は休憩中と言えども、電波が建物内に入らないので、メールチェックが出来ない。


普段から早く帰りたいのは山々だが、今日ほど退勤時間が待ち遠しい日はなかった。


通用口に出ると妙子が待っていた。


「ねー、後輩がさ、テレビ局の人とのパーティーの話持って来たんだけど、どうする?」


「あらー、華やかだねえ」


「なんか笑う犬だかに出てる若手芸人とか来るらしいんだけど」


「へー、でも芸人興味ないし、パス。エレガだけで行ってー」


潤奈は、妙子然り表舞台で男受けする女たちには、少々の引け目を感じていたので、あまりに豪華なニオイのする場は得意ではない。


「そうそう、今日ね」


潤奈はわざと話題を変えた。


「10時に札幌出た飛行機、何時頃に羽田着くかわかる?って電話来てー」


「航空会社に聞けよって」


「でしょ、ワケわかんないよね。調べちゃったけどさ」


当たり障りのない話をしながら、今日は男の話をしないようにした。


話したら、【HARU】のことも喋ってしまいそうだったし、なんとなく後ろめたくもあったからだ。


出会い系で1対1を求めるなんて、いくら妙子にでもみっともなくて言えなかった。


「こっちも相変わらず~。なんで“上でございまーす”って身振りまでつけて呼び込んでるのに、“下?下?”って寄ってくるんだろ。マジでお客うざいよねぇ」


「あー、至近距離でこうやってんだろ!って?」


潤奈は大袈裟に目の前で右手を上に向けた。




 *




潤奈は【HARU】からのメールを受信した。


 ―― よかった、返事来てた。


まるで、恋人からのように心が躍った。


好きな音楽の話題で盛り上がった。


潤奈は80年代の洋楽が好きで、【HARU】はその辺の音楽にとても詳しかった。


仕事の愚痴も書いた。


【HARU】は年上らしく、いつもアドバイスをくれた。


何かオススメの映画はあるかと尋ねてみた。


“真夜中のカウボーイ”が好きだから、今度一緒にビデオを観ないかと誘われた。


いつか会えるといいね、と返事をした。


よかったら電話をくださいと携帯電話の番号が送られてきた。





数日の間に距離を縮めた潤奈と【HARU】は、ついに直接ふたりで会う約束をした。



水曜日。


13時。


新宿タカノの前で。


身長182cm。


真田広之似。


着いたら、電話を。

人気ブログランキングへ

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

検索&ランキング
参加しています。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ
よろしくどうぞ。
カテゴリ
最新記事
Twitter
リンク
このブログをリンクに追加する
MicroAd
CHECK IT!
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。