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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ⑫

詩真は目覚めると、凍りつきそうな程に冷たい視線を泣き伏している慶子に送った。


輝元が、慶子に近づこうと腰をあげようとした瞬間に、詩真の小さな声が、それでもハッキリと明確に、慶子の耳に届いた。


「帰れ」


慶子の泣き声が止まる。


「慶子先輩…?」


詩真が、落ち着いた声で、更に言葉を投げつけた。


「返してよ、美園を。…あんたの馬鹿亭主を代わりに殺してよ…」


身体を起こして、だんだん尖った感情が増して、エスカレートしていく。


「…どうして?なんで、私の幸せをいちいち邪魔するの?大事な…大事な美園がなんで死ななきゃなんないのよ!あんたが死んでよ!!私たちの目の前から消えてよ!!!」


あまりの剣幕に近くのナースステーションから看護士が飛んできた。


「鈴木さん、落ち着いてください」


輝元は、半狂乱の詩真をただ見ていた。


慶子は、下を向いたまま、顔を上げることが出来なかった。


申し訳ない気持ちは確かにある。


しかし、そこに屈辱感が混じる。


床についた両手がプルプルと震えだす。


 ―― 幸せを…邪魔する…?


慶子は拳を握った。


「どうして、あんたなのよ?美園は、輝元との大切な繋がりなのに…。なんで、いつまで経っても、私から幸せを奪おうとするの?」


泣き叫ぶ詩真の身体を警察官が必死で押さえる。


看護士が医師を呼びに病室を出て行く。


「輝元の子どもを産めたのは、輝元を幸せに出来るのは、この私なのよ!」


詩真の放言に、慶子の中の何かが切れた。


「…っざけんじゃないわよ!!」


慶子は立ち上がって、勢い、ベッドにのしかかった。


「黙って聞いてりゃ、勝手な事言ってんじゃないわよ!」


我に返った輝元が慶子を止めようと手を出したが、強く振り払われた。


「離してよっ」


「慶子、止せって」


ベッドにのっかった慶子が詩真の両肩に掴みかかり、揺さ振った。


「ねえ、幸せを邪魔したのはどっちよ?妊娠なんて卑怯な手使ってテルを私から奪っといて!」


警察官が、初めて知る事実に唖然としている。


「大体、今夜だって、私たち夫婦にとって一生を左右する大事な日だったのよ!事故はこっちが悪いかもしれないけど、急に飛び出すような躾をしている時点で、あんたの子育てに疑問を感じるわ!」


輝元がギョッとして慶子を見る。


「あの子が元凶なのよ!子どもを男を引き止める為の道具なんかにしないでよ。そんなんだから簡単に死…」


そこまで言って、慶子はハッと口を噤んだ。

 ―― 私、今、何言った…?

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Comment

美琴 | URL | 2008.10.28 11:27
■あちゃあ・・・

言っちゃいけない事を言ってしまいましたね。
これはもう、慶子の人間性が疑われても仕方がないですね。

どんな過去があろうと、どんな葛藤があろうと、ひとつの尊い命が失われてしまったのですから、ここはひたすら謝罪するべきだったのに・・・

慶子もイタイ女になっちゃったなあ・・・
本格的にドロドロしてきましたね!ひえ~

Marcy | URL | 2008.10.28 11:28
イヤ、オレは許す。
言ってやれ!慶子。
このバカ女に、もっと言ってやれ!
香月 瞬 | URL | 2008.10.28 11:29
>美琴さん

あちゃあ、ですよね。

ちと、デリケート過ぎる題材を扱ってしまってるので、私自身もこんなん書いてて大丈夫かと、ヒヤヒヤしてます。


■さすが

Marcyらしいコメント。
ありがとうございます。
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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