FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

* 第四話 * ~早苗の場合~ ④

あれから、早苗のもとに毎晩といっていいほど、八木が現れた。

電話だったり、家に遊びに来たり、話は専らマリアのことだ。

早苗もまんざらじゃない感じを持ちつつ、八木にいろいろアドバイスらしきものをしていた。

この日も早苗と八木は電話で話していた。

「で、やっとマリアちゃん、彼氏と別れてくれたんだよな」

「えっ?」

早苗は初耳だった。

慌てて取り繕う。

「そ、そうそう、マリアも大変だったんだから~」

何故、自分が知ったかぶりをしたのか分からなかった。

しかし、とっさに出た言葉だった。

「でね、近々、コクろうと思うわけよ」

「おっ?来た、来た!言っちゃいますかぁ~」

早苗はおどけつつ、

「でも八木さ、野球は?彼女とか言ってる場合じゃないでしょうよ」

「いやいやいや、このチャンスは逃せないっしょ」

八木は浮かれて電話を切った。

受話器を置いた早苗の心臓の音が高鳴っていた。

マリアは、いつのまに別れたんだろう。

どうして知らないのか、納得がいかず、早苗は憤慨していた。

親友なら相談のひとつもあったって、いいじゃないか。

マリアは、このあと八木と付き合うことになるのだろう。

早苗は布団に入ろうとして、止まった。

「いやだ…」

そう思った途端、早苗の中の感情がぐるぐる回った気がした。

八木は…。

八木は、大切な友達だ。

誰よりもウマが合う。

失いたくない。

八木の気持ちは大事にしなくちゃいけない。

八木はマリアが好きなんだ。

八木は、これからマリアに告白するんだ。

そして、マリアはその言葉に頷くだろう。

親友のマリア。

「!!」

早苗は夢中でマリアに電話をかけた。

ツー、ツー、ツー。

通話中だった。

八木だ。

嫌だ、ダメだ。

早苗は、我を忘れて、何度もリダイアルを押した。

「早苗?」

「うん…、ごめん、遅くに」

「大丈夫よ。今ちょうど八木くんと話し終わったところでね」

早苗の口の中が渇いていく。

「うん、なんだって?」

「明日の学校終わってから待ち合わせたよ。話があるって言うから」

「…それ、断れない…かな」

電話の向こうが沈黙した。

「どういう意味?」

早苗は勇気を振り絞った。

「…だから、会わないで欲しいの」

「なんで?」

早苗も自分自身がムチャクチャなことを言っているのは、よく理解していた。

だけど、急に八木とマリアが付き合うようになるのは我慢がならなかった。

八木とマリアは、あくまでも早苗の仲介のもとにいなくてはならない。

早苗抜きで会うなんて、まして交際をするなんて、

「許せないの」

「はあ?」

マリアは心底、訳が分からないという発声をした。

「早苗が会わせたんだよ?私と八木くんを」

「わかってる」

「私、最初に聞いたよね?好きになってもいいのかって」

「わかってる」

「もう遅いよ。私、八木くんのこと好きになっちゃったもん」

早苗は黙るしかなかった。

その通りだ。

早苗が自ら、八木とマリアをこうなる方向に煽り、導いたのだ。

「ごめんなさい。でも、ダメなの。…私から」

泣きそうだった。

「私から、八木を取らないで」

「無理だよ」

マリアの怒りに任せた声が届く。

「もう好きになっちゃったんだから、どんなに早苗に反対されたって、大体早苗に邪魔する権利ないでしょう?」

言葉が辛辣になっていく。

「八木くんは私を好きになってくれたんでしょう?」

「…そうだね。でも、八木は大事な人なの。マリアにだけは渡したくないの」

「恋愛感情があるって意味?」

早苗の脳裏に彼氏がよぎる。

一体、何をやってるんだろう。

「…私」

早苗は突然に明るい声を出した。

「やだ、ごめん!あっれ~?私ったら、何てこと言ってるんだろうね~」

無理に笑う。

「冗談だから、ホント気にしないで。明日、八木と会ってくれて構わないから」

「早苗?」

「うん、両思いだもんね、な~んの障害もないよ」

慌てていて、何を言っているのか、混乱した。

「じゃ、頑張って。また明日ね!」

早苗は電話を切った。

瞬間、涙が溢れた。

最低だ。

こんな自分を八木に知られやしないだろうか。

早苗は、八木にとっても、大事な幼なじみでいなければならないのに。

これでは、何もかも失ってしまうではないか。

早苗は、八木に特別な感情を持っていることをこれ以上認めてはいけないと思った。

八木に嫌われてはならない。

今日の感情は忘れて、明日にはマリアにもきちんと謝ろうと考え直した。

ズルくてもいい。

八木にだけは、いい顔をしよう。

マリアはともかく、八木との関係性は保たねばならないのだ。


人気blogランキングへ

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

検索&ランキング
参加しています。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ
よろしくどうぞ。
カテゴリ
最新記事
Twitter
リンク
このブログをリンクに追加する
MicroAd
CHECK IT!
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。