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* 第三話 * ~亜弓の場合~ ⑦

鈴木の電話番号を携帯電話に表示させたまま、亜弓は迷っていた。

通話ボタンの上の指が少しでも動けば、すぐさま鈴木につながる。

しかし、今日は日曜日なのだ。

なんとなく暗黙の了解として、二人は日曜に連絡を取り合うことをしない。

それでも亜弓は、今、電話をしようとしている。

メールでもなく、明日会えるまで待つでもなく…。

夫は近所のコンビニまで出ている。

こちらの都合としては今しかないのだ。

亜弓の指が思い切った。

「もしもしっ、どした?」

呼び出し音も短く、鈴木の驚いた声が届いた。

「ごめん、突然」

「いや、大丈夫だけど、こぉらっ…」

受話器の向こうに、今まで感じたことのない違和感を覚えた。

「今…、どこ?」

「あーごめん、車。子供が…、姪っ子が一緒にいるんだ」

「ああ、その声か」

亜弓は、その巡り合わせに一人で納得した。

「随分、可愛がってるんだね、休みの日まで」

「ああ、オジっつっても父親みたいなもんだから。…で?何?」

「うん、明日、夜に会いたいの。夕飯、平気?」

「あ~、あ~、うん、わかった」

少し考えていたようだが、鈴木は了承した。

こんな日にまで、わざわざ電話をしてきたことに、ただならぬ空気を感じたのだろう。

「じゃ、仕事帰りに、いつもの道で拾うよ」

「ん、そうして」

「じゃ」

亜弓は電話を切ろうとする鈴木を引き止めた。

「あっ、ねえ!」

「はい?なになに?」

「子供って可愛い?他人の子でも自分の子でも」

鈴木は笑った。

「うん、まあ、可愛いよ~。俺、子供好きだしね」

ガチャガチャ。

「そうなんだ…。へえ。…あ、ごめんね、休みに。」

玄関に物音を感じたので、亜弓は一方的に電話を切った。

「ただいま~」

夫がコンビニの袋を下げて帰宅した。

「オマケ欲しくてこの菓子買っちった~。…で、亜弓、どうだった?」

夫が小さなフィギュアを見せてきた。

「またそういう余計なものを…」

亜弓は苦笑いを返しながら、夫に棒状のものを差し出した。

夫は目を丸くして、それをまじまじと眺めた。

「その青い線が浮き出てるってことは…?」

亜弓はため息まじりに答える。

「そういうことよ」

床にフィギュアが落ちた。

「…っしゃー!」

夫は力強くガッツポーズをした。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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