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* 第二話 * ~佐和子の場合~ ⑤終

身体全体から、今すぐこの場から逃げ出したい感を発している正和を追うように佐和子も部屋を出た。

足早な正和に着いていくのに必死で、フロントにキーを預ける隙もない。

佐和子も負けじと早足になった。

慌てて装着した生理用ナプキンの収まりが悪くて股間が気になるが、今は構っていられない。

「ご、ごめんね。急に生理来ちゃってさ、ビックリしたよね」

正和のご機嫌を伺うように尋ねたが、返事はなかった。

こんな処女喪失は認めたくなかったから、佐和子はあくまでも生理が来たということで押し通そうと思った。

さっきの正和の慌て様から現在の冷たい素振りから、正和は完全に見抜いているだろう。

やはり年増の処女は敬遠されるのか。

正和の態度は、佐和子の心にかなりの傷を与えた。

男性にとって見慣れない血液は確かに衝撃だろうが、あまりの変貌に佐和子は負い目を感じたのだ。

努めて明るく振る舞う。

「晴樹くんたち見つかるといいね」

二人はずんずん鴨川に向かって歩いた。

正和は喋る代わりに小声でぶつぶつと、例の歌を口ずさんでいた。

「♪…ッツだぜ…」

もう手もつなげない。

正和の歩みは速くなる一方だった。

橋の脇から川べりに降りられる隙間を見つけて二人は坂をおりた。

この寒空、もう真夜中だというのに、未だ人出はあった。

この中におそらく亜弓も晴樹もいるのだろう。

雪の残りが凍結しているかと思えば、水溜まりでぐちゃぐちゃにぬかるんだ地面を、二人はどんどん進んだ。

「危ねっ」

正和がつるりと足を滑らせ、舌打ちをした。

恥ずかしさがイライラに拍車をかけたようだ。

佐和子はいろんな事が限界になって、後ろから声を掛けた。

「もういいや。」

正和は構わず歩く。

「ねえ、帰る。亜弓ちゃんたちとも会えないし、私、ホテルで待ってた方がいいよね」

正和がようやく振り返り、また橋の上に戻るとタクシーを拾った。

「運転手さん、このカード使える?」

正和はタクシーに乗り込むとそう聞いた。

「現金持ってないねん。とりあえず御池まで行って」

そんな事を話していたが、佐和子は下半身が気になってあまり耳に入らなかった。

後部座席の白いシートに両手を置いて、その上にお尻を乗せる。

汚れるのではないかと不安だったのだ。

何分もしないうちにタクシーはビジネスホテルの前に着いた。

「ほなね」

正和の佐和子に向けた最後の言葉だった。

「観月橋まで行って」

車を降りた佐和子の耳に、その台詞と同時にドアの閉まる音が響いた。

正和は顔をこちらに向けることすらなく、タクシーはあっという間に走り去ってしまった。




部屋に戻った佐和子は急いでジーンズを脱ぎ捨て、空の浴槽に入ってから、すべての衣服をとった。

女性として十年以上見慣れた筈の綿には見たこともない程の赤い吸収があった。

佐和子は愕然とした。

赤いものは脚を伝っていく。

冷えきった身体に熱いシャワーを浴びる。

湯が赤く染まり、排水溝に流れ行く。

止まらない。

佐和子は恐ろしくなって、自分自身をぎゅっと抱き締めた。

尋常じゃない血液が体内からとめどなく排出されていく。

「どうしよう…」

こんな話は聞いたことがない。

初めてのセックスのあとはこんなに血が流れるの?

分からない。

分からない。

25年も生きてきたのに、まったく分からない。

焦って、身体を粗末に扱ったから、罰が当たったのだろうか。

否、もともと生理の予定日も近かったんだから、予期せぬ刺激に身体が驚いただけだ。

でも、下腹部が痛い。

一生懸命に冷静になろうとするが、パニックで息があがり、喉からひゅーひゅーという音が漏れる。

だが、不思議と涙は出なかった。

「正和くん、助けて」

この期に及んで、佐和子は正和を想った。

しかし、その時に初めて、連絡先はおろか苗字さえも聞かなかったことに気付いた。

力が抜けて、血だまりにしゃがみ込んだ。

放心状態でコツンと頭を壁につけるとシャワーが顔にかかる。

「何やってんだ…私」


 ―― コンコンコンッ。


突然、ユニットバストイレのドアが叩かれた。

「佐和子?佐和子!!」

亜弓だ。

「おかえり。今出るから…」

佐和子は絞りだすようにそう答えると、ようやく声を殺して泣いた。



‐終‐

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Comment

まきっちょ | URL | 2008.10.25 16:34
■ふ~む

佐和子さん 残念な初体験ですね。
リアルな性描写に今回もドキリです。

遊びに行くのが殆ど三条や四条の私なんで
結構楽しく!?読めました。
男の人は女子が初めてだと、喜ぶか引くかですね。まぁ~歳にもよりますがね。
次、亜弓ちゃん読みます!
香月 瞬 | URL | 2008.10.25 16:36
>まきっちょさん

順に読んでくださっているんですね。
香月、感激!

京都を舞台にしてはみたものの…、違和感なかったですかね(^o^;
一年前に、ここまであからさまな描写はしないほうがいいのかなとか悩みながら書いたのを思い出しました。

どうせなら初体験は殿方に喜んでいただきたいですね~。
小町 | URL | 2009.01.28 17:15 | Edit
しょっぱなから、え!何々!
失楽園?なんて思ったら、なるほど喪失、驚かされました。
かわいそうな佐和子ちゃん、許せん正和!
女性が月のものって言ってるんだから、そううけとってあげなさいよ~、、
あからさまにどんびきする殿方、割といるものなのね。

でも最近の世の中、私の回りには30をすぎても彼女が一度も出来たこと
ない人、逆に沢山います。
奥手な男性もたくさんいるのよね。
香月 瞬 | URL | 2009.01.29 10:01
遊びでそうなった女性がこんな状態だったら、きっと退くんでしょう。
保身です、保身。

オクテな男性は、逆に私が退いちゃったりして。

あれ?私が正和??
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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