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* 第二話 * ~佐和子の場合~ ②

歩きながら、佐和子は緊張していた。

この流れ、おそらく正和は佐和子と寝たいと思っている。

鴨川の反対側を指差し、単純明快に正和は言った。

「あそこ行かない?」

指先が示す黄色い建物は、明らかにラブホテルである。

佐和子は、処女であることを悟られないよう、慣れている女を装うつもりだった。

だから、素直に従った。

会話にだんだん下ネタが多くなってくる。

名実共に耳年増な佐和子は冗舌な正和に話を合わせながら、近付いてくる黄色い建物で繰り広げられるだろう初体験を夢想した。

少し下半身が熱くなった気がした。

「この正月に東京行ったんやけど、横浜も近いよな」

正和は仕事で代々木体育館に来たという話を始めた。

「なんで体育館なの?」

「試合。俺、実業団バレーやってるから」

決して低い背ではないが、バレーボールをやっている割には背が足りないように感じた。

「また行くから、あとでベル番教えてな」

正和はにこやかに言い、佐和子はその台詞に安心した。

そして、これから遠距離恋愛が始まるのかと胸が高鳴る。

25歳、ようやくの本格的な交際が、遠距離か…と複雑な気持ちも少しあった。

「あかん、満室やって」

ラブホテルのそれぞれの部屋が並ぶ案内番の電気はすべて消えていた。

「待つ?」

佐和子はどう答えるのが正解なのか分からなかったが、なんとなく興醒めした感じで答えた。

「亜弓ちゃんたち探そうよ」

亜弓と晴樹とはぐれたままだった。

佐和子は不安になったのだ。

亜弓には横浜に恋人がいる。

今、このホテルが満室でなかったら、佐和子と正和は間違いなくここでセックスをしていただろう。

もしかしたら、亜弓もどこかで…。

「大丈夫やて。晴樹は俺みたいなことせえへんよ」

佐和子は笑って、また正和の手を握った。

「戻ろうか」

二人は今来た道を戻った。

♪ガッ…だぜ…

正和はさっきカラオケでも歌った去年の流行の曲を会話の間があく度に口ずさんだ。

妙に耳に残るフレーズで、まるで口癖のようだ。

「その歌好き?」

「え?なんか歌ってた?」

なんとなく苛立った口調だった。

「亜弓ちゃん、どこにいるんだろ」

「鴨川の畔にでもいるんちゃうか。それより、トイレ行きたいな」

正和はそわそわしたが、佐和子は急に襲ってきた不安に思考が定まらなかった。

鳴らないポケベルを恨んだ。

関東圏しか電波の届かないポケベルは、関西のそこでは役立たずである。

亜弓と連絡をとる述はない。

ポケベルの時刻は、零時をまわっていた。

「一回さ、ホテル戻ってもいいかしら。亜弓ちゃん帰ってるかもしれないし」

「どこ?」

「オイケって読むのかな」

「ええよ」

「ありがとう、正和くんもそこでトイレ行けばいいよ」

「そやな」

正和はブルッとした。

ダウンコートを着ている佐和子とは反対に妙に薄着の正和が本当に寒そうで、佐和子は一生懸命握っていた手をさすっていた。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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