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* 第一話 * ~珠子の場合~ ⑦

珠子は、急速に自分の気持ちを自覚した。


アイツはそんな雰囲気を感じ取りながらも、いつでも態度は変わらなかった。


二人が付き合っていないことを知っている佐和子がよく言っていた。


「谷内くんてさ、絶対に珠ちゃんのこと好きだよ。いちいち言わなくても分かるだろってことでしょ」


珠子もそう思っていた。


電話は毎晩掛けたり、掛かってきたり。


勤務の時間さえ合えば、行きも帰りも一緒だった。


休みの日もよく一緒に遊んだし、家にも行った。


だけど、何もなかった。


決定的な言葉も態度も行動も、何もなかった。


そんな日々を過ごすにつれ、珠子の想いは大きくなっていく。


 ―― 私は、貴昭くんが好き。


もう限界だった。


周りの人たちは、二人を恋人のように扱う。


でも、アイツは何も言わないし、何もしない。


同じ空間を、ただ二人で過ごす、そんな“トモダチ”でしかないと、珠子は感じていた。


「なんか周りは付き合ってるとか言うけどさ、そんなん気にすんなよ」


アイツは、いつもそうやって見当外れなことを言った。


苦しい。


側にいるだけで、好きな想いは溢れてくる。


アイツだって、分かっていたはずだ。


珠子が、どんな気持ちで見つめていたか、知っていたはずだ。


 ―― 伝えよう。


そう決心した日、珠子はアイツのアパートの一室にいた。


「あのね、貴昭くん…」


何かを感じ取ったように、アイツは立ち上がった。


「煙草切れたし、ちょっと散歩でもしようか」


二人はアパートを出、煙草と缶コーヒーを購入すると、なんとなく近くの小さな公園に立ち寄った。


時々、犬を連れた人が何人か通る。


その程度の、閑散とした風景だった。


二人はそれとなく、それぞれにブランコに腰掛けた。


「俺ね、夢があるんだよね」


缶コーヒーを開けながら、アイツは言った。


珠子は、ゆっくりブランコを漕ぎながら、黙って話を聞いていた。


壮大な夢をアイツは語った。


そんなの叶うワケがないと笑ってしまうほど、大きな、夢物語だった。


「私はそんな夢より…、貴昭くんの今の気持ちが知りたいよ…」


意を決して、珠子は話を遮った。


「私は、好きだよ」


あははははは…と、アイツは笑った。


「ええ?俺ぇ?」


自虐的な程、甲高い声でアイツは笑い続けた。


「やめときなよ」


アイツは、グンッと宙を蹴って、大きくブランコを漕いだ。


それっきり。


それっきり、アイツは口を閉ざした。


そして、それっきり、珠子の前から姿を消したのだ。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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