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* 第一話 * ~珠子の場合~ ④

出勤し、更衣室に入ると、珍しく佐和子が話しかけてきた。


見られたな、と即座に思う。


「随分、仲良さそうだったじゃない」


「あはは、そうですかぁ」


珠子は内心警戒しつつも、にこやかに答えた。


佐和子のせいで、この三ヶ月の職場環境は地獄だった。


挨拶をしても無視され、都合の悪い仕事は押し付けてくる。


裏で手を回され、シフトが同じ日のスタッフがわざと欠勤し、手が足りない中、たった一人で勤務した日もあった。


そんなことをしたところで、悪い評価は珠子ではなく、手を貸した側につくのだからと、黙って耐えていたのだ。


それに元はといえば、珠子の失態から生じたもの。


陰険だとは思ったが、時間が経てば苦痛も過ぎると考えていた。


それでも、自分は孤立しているということが誰の目からも明らかな毎日は、正直こたえる。


今日もモノレールではなく、バスに出勤経路を変えたのは、なんとなく逃げたかったからだと気付く。


佐和子が話しかけてきたということは、この三ヶ月味わった苦痛は終わりなのかもしれない。


的は変わらないが、新たに興味深そうなネタが出来たからだ。


たかが、男性と数メートルの距離を歩いただけで。


「たまたま同じバスに乗り合わせただけですよ」


珠子は極力笑顔で答えた。


「ふーん、そういうのがさ、実は怪しいんじゃないかなって感じちゃうんだよねぇ」


さっさと話を切り上げたくて、珠子は更衣室のドアに手をかけた。


「アイツ、気をつけたほうがいいわよ。結構、見た目も悪くないしさ。気さくでモテるらしいって皆の注目の的なんだから」


何に気をつけろと言うのか。


アイツの手の早さか。


それとも、周囲のやっかみか。


くだらないな、とため息を漏らす。


最初は電話などするものかと思っていた珠子だったが、今夜、アイツに電話してみようと心に決めた。



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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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