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* 第一話 * ~珠子の場合~ ②

あれは、当時の知事がある地域の開発を取りやめると宣言した頃だ。

珠子は、その年に高校を卒業し、開発を見込んで早々に建てられた大規模な複合レジャー施設内でアルバイトをしていた。

最寄駅から更に出来たばかりのモノレールに乗って、開発地区に入る。


周りはまだ更地だらけの寂しい土地だったが、映画館やショッピングモール、アミューズメントパーク等が入ったそのレジャー施設だけは、物珍しさからか毎日観光客が絶えなかった。

珠子の仕事は、施設館内の案内業務である。

同じレジャー施設の中の警備部門にアイツはいた。

朝、出勤すると、夜勤明けのアイツが入館証をチェックするために窓口に座っている。

開館の時間になって、珠子が入り口脇の案内カウンターにつくと、その頃帰っていく。

珠子はいつもニヤついた顔で挨拶をしてくるアイツを気持ち悪いと感じていた。


「珠ちゃんてさ、あの警備の人が通ると露骨に嫌な顔するよね」

先輩アルバイトの佐和子だ。

「顔に出てますか?なんとなく気になるんですよね、あの笑顔が」

佐和子が意味深な表情をこちらに向けた。

「悪い意味でですよ」

釘を刺す。

佐和子には、あることないこと言いふらす癖があるので、気を付けるようにと先輩社員から聞かされていた。

「でもさ、あの人って珠ちゃんに気があるんじゃない?」

珠子は佐和子を軽く睨んだ。

「だってさ、前はちゃんと通用口から帰ってたわよ。わざわざここ通るかしら」

欝陶しい。

珠子は無視して業務に集中した。

だったら何だと言うのか。

にこやかにしていなければならない業務だったが、気分を害した珠子は、ついつい言動に余計な力が入ってしまう。

その日は、来館客からクレームが入った。

「ちょっと珠ちゃんさぁ、お客さまに舌打ちはないんじゃないのっ」

交替で休憩に入っていた珠子の代わりに佐和子がしこたま怒られたらしい。

なんとなくきちんと謝れなかった珠子は、それを切っ掛けに佐和子からきつく当たられるようになり、日に日に仲間内から孤立していった。

少し居辛くなって三ヵ月もした頃、珠子は気分転換に通勤にモノレールを使わずバスに乗った。

風の強い日だった。

バスから降り、信号待ちで立っているのもしんどいほど、向かい風に煽られた。

「おはよう」

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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