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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ④

終業後。


佳澄は、思い立って、例の本屋に寄ることにした。


昨日の文庫本を読み終わってからと思っていたが、朝、佑介のことを考えるハメになって、思い直したのだ。


 ―― あの人がいるかも分からないけど…。


自分の心に言い訳しながら、ファッション誌でも買おうと言い聞かせた。


ちょっとドキドキした。


佑介のことを想う以外にこんなに心がときめいていたのは久しぶりの感情だった。


数軒先に本屋が見えたとき、少し躊躇した。


「平常心、平常心」


佳澄は胸に手を当てて一息つくと、一歩を踏み出した。


と同時に。


「あ」


思わず、声に出てしまい、慌てて足を止める。


偶然。


出入口の自動扉が開き、エプロン姿の秋谷が店先に出てきた。


一旦、佳澄と反対方向にあるラックに目をやり、ふと顔を戻した秋谷の視界に佳澄の姿はバッチリ映ったようだ。


「あ…」


同じように、声に出てしまった秋谷が手を口元に当て、照れくさそうにはにかんだ。


「こんにちは」


秋谷が佳澄に向かって、声を掛ける。


佳澄の顔がカアッと熱くなった。


おどおどと会釈し、腰が引けた状態で、ゆっくり本屋に近づく。


「ど…も。こんにちは…」


「よかった。もう来てくれないかなって思ってたんです。僕、ちょっと気持ち悪いことしちゃったでしょ?」


佳澄が顔の前でブンブンと手を横に振った。


あれ?という顔で秋谷が続ける。


「名刺…。僕の…、気付きました?」


コクコクコクと佳澄が頷く。


「え…っと」


秋谷が困ったように、自分の鼻を掻いた。


瞬間、何かを思い立ったように、バッと店の中に戻ると、エプロンを置いて、すぐさま店先に出てきた。


「ちょっと、いいですか!」


秋谷はそう言うと、佳澄の腕を掴んだ。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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