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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ⑨

慶子は、とるものもとりあえず、夫の入院先の病院へ駆けつけた。


 ―― そんな馬鹿なことって…。


呼吸が荒くなる。


さっきから、胸の奥から何かが込み上げてきて、それを必死で飲み込む。


 ―― 泣いちゃダメだ。


気丈に、気を取り直して、居住まいを正す。


病院の受付で名前を言うと、ICUを案内された。


すぐさまエレベーターで指定された階へ向かう。


エレベーターが開いた先の廊下には、一人の警察官が立っていたが、慶子はそれをスルーした。


ICUの受付で名前を告げ、指示された紙に記名をし、恐る恐る中に入る。


静まり返ったその部屋は、機械音と呼吸の音だけが鳴り響いていた。


ビニールのカーテンでいくつものベッドが仕切られている。


夫の姿を見つけ、ベッドに駆け寄った。


「永治!」


夫は起きていた。


「ごめん。さっきまで気を失ってたらしいけど、こんなの大袈裟だよ」


「良かった…、無事で…」


慶子は全身の力が抜けて、へなへなと丸椅子に座り込んだ。


「事故っちゃったよ…」


へへへと慶子の夫、山本永治は苦笑した。


「笑い事じゃないわよ、もう」


ベッドの上で身動きが取れない風な永治だったが、それでも表情は元気そうで、慶子はホッとした。


「なあ、廊下に警察の人が待ってたろ。お前に話があるらしいから、行ってきて」


「…わかった」


気が重かった。


輝元の声が頭をよぎる。


 ―― 娘が死んだ…。


廊下に出ると、警察官は来た時のまま、立っていた。


「山本、永治の家内です」


慶子がそう声を掛けると、ああ!と合点のいった顔をして、頭を軽く下げた。


「ちょっと、あちらの待合室に行きましょうか」


警察官が、そう案内した。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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