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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ⑤

秋谷が佳澄の腕を引いて、ずんずん歩く。


「きゃ」


思わず、前につんのめる。


「すみません…。でも、ちょっとだけ。お願いします」


秋谷は佳澄の手を引いて大股に歩きながら、そう言った。


 ―― な、なんなの?この人、大丈夫なの?


数メートル先の路地を曲がった先に小さな公園がある。


二人はそこに足を踏み入れた。


落ち葉の絨毯を踏みしめると、秋谷のスニーカーと佳澄のブーツがガサリと音を立てる。


こじんまりとした噴水の前にベンチがあった。


秋谷が、完全に戸惑っている佳澄の両肩を持って、そこにそっと座らせる。


座らされた佳澄の前に直立不動になると、


「ごめんなさいっ!」


と、秋谷は勢い良く頭を下げた。


佳澄は引き気味に、深々とお辞儀をしている秋谷の後頭部を見つめる。


「な、…なんなんですか?」


ようやく口を開いた佳澄に安心したのか、秋谷は頭を上げると佳澄の目線までかがんだ。


「僕、あなたの名前も知りません。突然こんな失礼なことをして、本当にすみません」


秋谷はもう一度、謝った。


「だけど、僕、あなたを初めて見た時から、どうしても気になってしまって…」


「へ?」


「一目惚れだったんです」


佳澄は目を丸くした。


秋谷は、佳澄から視線を逸らさない。


長い長いストップモーション。


紅い枯葉がひらりと舞った。


「嘘…ですよね?」


「本当です」


真っ直ぐな視線のまま、きっぱりと応えた。


「えっと…」


 ―― 確かに昨夜、そうだったりして~!なんて甘い妄想はしたけど、こんな展開ありっ??


大きく取り乱した佳澄の前で、秋谷はまたも鼻を掻き、はにかんだ。


「へへ…、すんません、ホント」


そう言って、立ち上がると、今度は佳澄の隣にドッカリと腰を降ろした。


「やっと言えて、ホッとしました」


横で、ふーっと大きく息をつく。


「いや、あの…」


「よかったら、また僕と会ってもらえませんか?」


隣からひょっこり顔を覗き込まれる。


「僕とデートしてくださいっ!」


「は、…はいっ」


 ――あれ?


勢いで返事をしてしまった佳澄は、恥ずかしさで真っ赤になって俯いた。


その様子を温かい笑顔で秋谷は見つめ、


「名前、聞いてもいいですか?」


と言った。


動揺して、首を激しく上下に振りながら、佳澄は焦ってバッグの中を漁った。


名刺ホルダーから、自分の名刺を一枚取り出す。


「はい…」


秋谷が名刺を受け取った。


「高橋…佳澄です」


秋谷がニッコリと笑う。


佳澄の心臓が高鳴る音が聞こえた気がした。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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