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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ⑦

佳澄と秋谷は、映画を観に来ていた。


アクアシティお台場。


ハリー・ポッターと賢者の石。


デートの定番中の定番。


クリスマスに向けてのイルミネーションが、更に二人を盛り上げる。


「あー、面白かったぁ」


映画館を出た佳澄はぐんと伸びをした。


「そうだね。娯楽映画って感じで良かったね」


秋谷も同意した。


「原作読んだことある?やっぱり、どうしても映像化されないシーンが出てきちゃうのが勿体無いよね」


「ううん、翻訳モノはあんまり読まないの。でも、本好きには映画化とかドラマ化って良し悪しかも」


「ああ、分かる。違うだろーっての、な」


アクアシティの出口から海側のデッキに出て歩く。


落ちかけている太陽が眩しかった。


佳澄は、とても自然に、穏やかに秋谷と一緒にいられることを嬉しく思った。


佑介とだったら、こうはいかない。


他愛もない会話も丁々発止のやり取りになる。


それはそれで面白くはあるが、とても疲れるのだ。


恋心を隠しながらの友達という付き合いは、気持ちに無理が生じることもある。


周囲は、告白しちゃえば楽になるとアドバイスしてくれたが、佳澄にはどうしてもそれが出来なかった。


「あ、そうだ」


自分のショルダーバッグから手袋を出そうとした秋谷が歩みを止め、中からちらりと本を覗かせて見せた。


「これ。前に話した宮部みゆきの“模倣犯”。とりあえず上巻だけ持って来たから」


「あー、ありがとう」


「重いから一冊だけね。帰り際に渡すよ」


佳澄が宮部みゆきは時代モノしか読まないと話したら、これは絶対読むべき!と秋谷がミステリーの最新作を教えてくれたのだ。


「私、結構読むの早いから、二冊貸してくれても良かったのに」


電話口でのおぼろげな口約束を覚えていてくれたのかと佳澄は感激していた。


「だーかーら、これ重いんだって!」


「あはは、そっか」


「じゃあ…」


そう言って、秋谷が少し遠くを見た。


真っ赤な夕陽が海に滲んでいる。


「佳澄さん。このあと、うちに来る?」


少し躊躇ったあと、秋谷が言った。


すぐに答えなくてはと思うのに、変な間があいてしまう。


「あー…、うん。いいの?」


「あんま掃除してねえけど。…ま、本取るだけ寄って、近場で飯でも、ね」


 ―― 言い訳してる。


佳澄がくすっと笑って、秋谷の顔を覗き見た。


真っ赤に染まっているのは、夕陽のせいだけだろうか。


「じゃ、ゆりかもめ?」


「ああ。駅、向かうか」


先に大股に歩き出した秋谷を佳澄が追う。


佳澄は、足に合わせて大きく振る秋谷の腕を捕まえようかどうしようか、迷っていた。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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