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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ⑪

「もしもし?」


佑介からの電話だった。


「熱、下がったよ。薬って、すげえな」


「よかったね。食欲も戻った?」


ひとりオフィスに居残っていた佳澄の声が静かな部屋に響き渡る。


「ああ。そうだ。お礼に面白い本貸してやるよ。模倣犯って読んだ?」


佑介の言葉に、佳澄は自分でも予想以上に戸惑った。


「え?それは…ダメ…」


「うん?何?ほら、お前あんまりミステリーとか読まないだろうけど、これは面白かったからさ」


「あー、あー、うん、でも、…それはいいや。違うのがいいな」


ちょっとしどろもどろになる。


「違うのかよ?」


ちょっぴり不機嫌そうに佑介が聞き返す。


「あのー、あ、そうだ。それより何かご飯かなんか奢りなさいよ!ね!」


「えー?」


半ば強引にそんな約束をした。


模倣犯という本は、秋谷から借りるという約束になっている。


ここは、守りたかった。


なんでかよく分からないけど。


通話を終えた佳澄は、猛烈に秋谷の顔が見たくなった。


急いで身支度を整える。


 ―― 謝りたい。


会社を出ると、強めの風が佳澄の身体を煽る。


首にかけていたマフラーをぐるぐる巻きにして、駅までの道を駆けていった。


 ―― 会いたい。


ただそれだけの気持ちに押されていた。


無償に秋谷に会いたくて、本屋に向かう。


「うー、寒っ」


道すがら、余りの冷たい風に思わず独り言が出てしまう。


 ―― まだ仕事中かな。


佳澄は、ちょっと背伸びをして、外から本屋の中を覗いた。


エプロン姿の男性の後姿が奥に見えた。


「よかった、いた」


佳澄は自動ドアを抜ける。


奥にいた男性が入り口を振り返って、佳澄を見た。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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