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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ⑫

振り返った男性は、秋谷ではなかった。


「あ…」


自分を見つめて立ち尽くしている佳澄に男性は不思議そうな視線を送った。


「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」


「いえ、あの、秋谷さんは…?」


佳澄がしどろもどろに答えると、男性は営業スマイルを返し


「申し訳ありません。店長の秋谷は長期休暇中となっておりまして…」


と滑らかな口調で話す。


「そ、そうですか…。ありがとうございます」


長い休みをとっているとは、聞いていなかったので、少々面食らった。


高まっていた気持ちが折れる。


 ―― 会いたい時に会えないなんて…。


僕はまだ彼氏じゃないから…と話していた秋谷の言葉を思い出す。


妙に悲しくなって、鼻の奥がつーんとした。


諦めきれず、本屋を出て、秋谷の携帯に電話してみる。


【お客様のお掛けになった電話は、電波の届かないところにあるか…】


「えー?」


思わず、声に出てしまう。


数回リダイアルしてみたが、同じだった。


冷たい風が余計に身に凍みた。


 ―― こんなに秋谷さんの声が聞きたいのに。


改めて、秋谷の電話番号程度しか知らなかった自分に気付く。


 ―― 昨日が、変化のチャンスだったんだ。


とりあえず、メールだけでもしておこうとポチポチと言葉を綴った。


【昨日のお詫びがしたくて…。会いたいです。佳澄】


ピッと送信すると、とぼとぼと家路に着いた。


なんだか視界が滲む。


何故、涙が込み上げてくるのだろう。


呼吸が乱れる。


寒さのせいで、身体に力が入りすぎているのか、肩からガチガチに固まっていた。


節々が痛い。


自分の身体が自分のものではないような錯覚。


世界中が回っている。


「あれ…?おかしいな」


やっとの思いで、玄関に辿り着いた佳澄は、ブーツも脱げずにそのまま部屋に倒れこんだ。

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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