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* 第二十一話 * ~佳澄の場合~ ⑬終

 TREEE,TREEE...


何時間経ったのだろう。


抱えたままの鞄の中で、微かに鳴っている携帯の音で佳澄は目が覚めた。


顔が火照っている。


身体中が痛い。


 ―― 佑介のインフルエンザ、やっぱり感染ったかな。


力を振り絞って、起き上がると玄関の上がり框にいることに気付く。


ブーツも履いたまま。


鳴り止まない携帯電話をやっとのことで鞄から出したら、切れた。


溜息をついて、液晶を見ると23時と表示されていて驚く。


ふらふらしながら靴を脱いで、這い蹲ってどうにかベッドまで辿り着いた。


「熱…」


呟くと、もう一度、携帯電話が着信した。


「はい…」


「佳澄さん?」


「あ、秋谷さん…」


電話の相手が分かった途端、どっと力が抜ける。


 ―― やっと声、聞けた…。


「メール見たよ。今日、会いに来てくれたの?」


瞳から大量の涙が溢れ出すも、もはや止められなかった。


「佳澄さん?どうしたの?大丈夫?」


しゃくりあげることしか出来ない。


「泣いてるの?佳澄さん?何かあったの?」


電話口でぶんぶんと頭を振っても、秋谷には伝わるはずもない。


なんとか声を出す。


「秋谷さん…、あの、…私…」


「うん?何?」


受話器の向こうで必死になって佳澄の様子を探ろうとしてくれているのが分かる。


心配をかけてしまった。


そう思うとますます涙が止まらない。


「私の…」


 ―― そばに、いてください。


涙で遮られてしまって、溢れる想いがうまく言葉にならない。


「え?佳澄さん?何?もう一回…」


「…私とぉ…付ぎ合っでぐだざいぃぃ…えーん」


言いながら、佳澄は号泣した。


受話器からは戸惑った秋谷の声が聞こえる。


「ちょ、佳澄さん?何言ってんの?どうしたの?とにかく、今から行くから!住所、言える?」


何度も何度も根気強く、秋谷が佳澄の涙交じりの声を捉えようとしてくれる。


「うん、うん、わかった。203ね。すぐ行くから、鍵は掛けないでおいて。急ぐから!しっかりな!」


優しい声に包まれたまま、佳澄の意識はまた遠のき、夢の中へ入っていった。

 

 

 

慌てて部屋に訪れた秋谷が、涙の跡が残ったままの顔で、ぐっすり眠っている佳澄を心配そうに見下ろした。


「ああ…すごい熱だ」


おでこを触り、そっと髪を撫でる。


薄く目を開けた佳澄が、ふっと微笑んで、また目を閉じた。


安心しきった表情で。


「…やっと見つけた…」


佳澄が微かにそう呟いて、秋谷の手をそっと握る。


秋谷もふっと微笑んだ。


「僕もだ…」

 

  -終-

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Comment

cdoor | URL | 2008.11.13 21:06 | Edit
このお話は、今までの中で一番好きかも♪
> 「…やっと見つけた…」
いい台詞。
追い求めてもなぜかタイミングが合わず、
途方にくれてたたずんでいると、
思いもしない方角に答えがあるって、
仕事でも人間関係でも…「あると思います!」(笑)
香月 瞬 | URL | 2008.11.13 21:37
それはそれは。
一人でも好きと言っていただけるとホッとしますね。
スランプ中に模索してた番外編から生まれた話で、本当は結婚詐欺にしようかと思ったんですが、止めといて良かったです。
で、ここから確かcdoorさんが最初に読んでくださった十八話につながるわけですよ!
cdoor | URL | 2008.11.14 12:40 | Edit
あ、そうか♪
気がつかなかった。
結婚詐欺…ダメダメこの方が、
こういうジーンとくるやつが
いいんだよ、この歳になると(笑)
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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