FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

* 第二十話 * ~慶子の場合~ ⑧

慶子の背後で炊飯器の音がピーと鳴った。


「炊けた、炊けた」


蓋を開けて、濡らした杓文字で炊きたてのご飯をかき混ぜる。


この秋初の炊き込みご飯である。


安物ではあったが、マツタケの良い香りが慶子の鼻腔をくすぐり、思わず大きく深呼吸する。


 ―― それにしても、遅いなあ。


もう料理も粗方出来上がっている。


痺れを切らした慶子は、夫の携帯電話に掛けてみる。


自家用車で通勤しているので、普段、あまり運転しているだろう時間には掛けないのだが、仕方がない。


 …… 現在、電波の届かない場所にいるか、電源が入っていない為、かかりません。


無機質な声が、慶子にそう伝えてきた。


数回、掛けなおしたが、応答は同じだった。


時計の針は、八時半を指している。


もう一度、携帯に掛けようとした時、メールが着信した。


「ああ、ビックリした…」


呟いて、受信メールを開くと、輝元からの返信だった。


【交通事故。美園は即死。詩真は入院。電話する】


一気にズシンと気分が落ち込む、重大なメールだった。


 ―― 詩真と娘の美園ちゃんの二人が交通事故に遭ったのか…。


【電話する】の文字通り、慶子の携帯が鳴った。


「もしもし…?」


「うん、慶子…?」


久しぶりに聞く輝元の声だった。


「…参ったよ。死んじゃうなんて…」


憔悴しきった声に、不謹慎にも胸の奥がギュっとなる。


「車同士?相手はどうしてるの?」


「いや…、こっちは歩いてて。…それが、相手の車が大破しちゃってさ、運転してた人も病院運ばれた」


慶子は溜息を吐いた。


「あのさ、慶子。失礼承知で聞くんだけど」


「何?」


「旦那さん、帰ってきてるか?」


「え?どういうこと?」


聞き返すと同時に家の電話が鳴り響いた。


いつもより音がけたたましく感じて、慶子はビクッとする。


「なんか、電話掛かってきちゃった。また、後で」


携帯電話を切って、家の電話に向かった。


 ―― 旦那さん、帰ってきてるか?


どうして、こんなに胸騒ぎがするのだろう。


慶子は、一呼吸置いてから、受話器をとった。


「はい、山本でございます」

人気ブログランキングへ


 

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

検索&ランキング
参加しています。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ
よろしくどうぞ。
カテゴリ
最新記事
Twitter
リンク
このブログをリンクに追加する
MicroAd
CHECK IT!
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。