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* 第二十二話 * ~忠則の場合~ ④

「おつかれさま」


忠則が着替えを終え、店の外に出ると、外壁に寄りかかっている窓香がいた。


「あ、おつかれさま…」


「斉藤くん、このまま帰るつもりでいたでしょ」


内心、図星だったので、忠則の目が泳ぐ。


「付き合えって言っといたでしょ!ほら、行くわよ」


ノースリーブから長く伸びる少し筋肉のついた細い腕を忠則の腕に絡ませた。


忠則の肘が、薄い布を通して窓香の身体の柔らかい部分に当たっているのが分かる。


「いつも真っ直ぐ帰るだけじゃつまらないじゃない。飲めるでしょ?」


くいっとお酒を呷るジェスチャーをする。


「いや、俺、未成年だし…」


「固いこと言わなーい」


太陽に向かって歩き出した二人の後ろには影が長く伸びている。


少し歩いて駅に近づくと、窓香は、強引に忠則をこじんまりとした居酒屋に連れ込んだ。


開店したばかりのその店には、まだお客はいない。


「いらっしゃい。お、今日は連れがいるんだ?」


店員が気さくに窓香に話しかける。


「まあね。生ふたつね」


そう言って、勝手に奥の座敷に上がった。


「常連さんなんだ?」


「そうよ。仕事が終わるとここで飲んで帰るの。私の憩いの場」


サンダルを脱ぎ、膝をついてテーブルの奥へ移動する。


ついミニスカートから伸びる生脚に目が行ってしまい、忠則はドギマギした。


 ―― どういうつもりなんだ?奥居さん…。


ビールとお通しが来た。


「はい、お疲れ~」


有無を言わさず、ジョッキで乾杯させられた。


忠則は、ゴクゴクと喉を鳴らしてビールを流し込む窓香を呆然と眺めていた。


「うまーっ」


ぷっくりとした唇に白い泡をつけたまま、至福の時といった様子の窓香に思わず微笑んでしまう。


「ほら、あんたも飲みな」


「あ、はい…」


忠則は遠慮がちにジョッキに口をつけた。


根が真面目な忠則は、お酒なんてまだ数える程度しか飲んだことがない。


その様子を正面の窓香がじっと見ている。


「…ホントに、お酒ダメなんだね。男のクセに」


冷ややかにそう言う窓香に忠則はちょっとムキになって、グイとビールを飲み込んだ。


「一応、まだ10代なんで」


ムッとした表情で返すと、窓香が笑った。


「ごめん、ごめん。もういいよ。それより何か好きなもの頼みな」


そう言って、フードメニューを忠則に差し出した。


店員を呼んで、適当に食べ物を頼むと、少し場が落ち着いた。


「あのね。実は、斉藤くんに聞いて欲しかったことがあるんだ」


「え?…なんすか?」


「うん…」


少し言いにくそうに窓香が視線を落とした。


また、ふっと忠則に視線を戻す。


大きな瞳には涙が溢れそうなほど盛り上がっていた。


 ―― えっ…?


忠則はどうしていいか分からずに、焦って、またビールを一口飲んだ。


「私ね…」


1、2度、睫毛を瞬かせると、ポタリと大粒の涙が落ちた。


忠則の手は汗ばんでいた。


「店長に愛人やれって言い寄られてるの…」

 

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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