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* 第二十二話 * ~忠則の場合~ ⑤

「え?」


忠則にとって、あまりに突飛な話で、思わず箸を落としてしまった。


「あ、すんません…」


箸を拾うと、忠則はポロポロと涙を零す窓香をじっと見た。


「…嫌…なんですか?」


こくりと頷く。


少しムッとした表情で窓香が言った。


「嫌に決まってるじゃない!店長ってもう50過ぎてるのよ?」


忠則は何と言ったらいいのか分からずに、俯いてしまった。


「仕事は好きだから、辞めたくないの。店長にもさんざん世話になってきたから、無下に断れないし…」


「え、でも、嫌ならハッキリ言わないと…」


「わかってるわよ!」


ドンっとテーブルを叩く。


「簡単に断れたら、悩んでなんかいない…」


また新しい涙が窓香の頬を伝っていく。


「一度…、酔った流れで…、その、そういう事があって…」


窓香が伏目がちに大胆な告白をしてきた。


「それがあるから、どうしてもうまく断れなくて…」


恥ずかしいのだろう。


窓香のお酒のピッチがどんどん早くなっていく。


「…でも、このままじゃ」


忠則が無い知恵を絞って、なんとか言葉を返してあげようと口を開いたが、


「ねえ」


と遮られた。


窓香が、涙で濡れた大きな瞳で、上目遣いに忠則を見つめる。


「私を守って」


忠則の喉が上下した。


お酒で真っ赤になった窓香の胸元が目を引く。


ウブな忠則には刺激が強かった。


 ―― 酔った流れで寝てしまった…。


この言葉がリアル過ぎて、忠則の頭の中には良からぬ想像が膨らんでいく。


店長と窓香の肢体が脳内で蠢き出した。


店長の顔はいつのまにか忠則に変わっていく。


「ねえ、斉藤くんが早番にいる夏休みの間だけでもいいの」


「…」


「勤務時間外も一緒にいてほしいの」


テーブルの上で、忠則の手に窓香の手が重なった。


「ね…?」


忠則の思考回路はショート寸前だった。


「うん…」


なんとなく、頷いてしまった。


 ―― 俺が、奥居さんを…。


「守ってくれるの?」


もう一度。


今度は、確実に頷いた。


「…わかった」


「ありがとう!」


ワンランク、トーンの上がった声で、窓香は今度は両手で忠則の手を握った。

 

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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