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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ②

俺は、果敢にもアタックすることに決めた。


正直言って、自信はある。


俺の音楽は、俺の唯一の武器だ。


講義が終わり、ちょうど練習室へ向かうところを待ち伏せた。


彼女の名は、矢板千春という。


まだ、そう親しく話したことはないが、一応、顔見知りではある。


ちょっとドキドキするが、大丈夫だ、話の内容はちゃんと考えてある。


しばらくすると、スティックを持ちながら、渡り廊下を歩いてきた千春を見つけた。


「ゲ…」


予想をしなかった訳ではなかった。


千春の隣には、伊崎の野郎がいた。


185cmはありそうなタッパ。


小さい顔に長い脚。


千春も、長丁場ドラムを叩くだけあって、締まった身体をしている。


颯爽と歩くと栗毛色の長い髪が軽快に揺れる。


遠目から見ると、悔しいくらいにハマってる。


だが、ここで引いて堪るか。


俺は勇気を出して、一歩近づいた。


先に気付いたのは伊崎の方だった。


サックスのリードを湿らせるために、それを口にくわえたまま、俺に「よう」と声を掛けてきた。


「おお」


俺も軽く手を挙げ、反応したが、お前には用はないと、すぐさま千春に声を掛けた。


「矢板さん。ちょっと頼みがあるんだけど」


千春は、驚いた表情で俺を見上げた。


「有野君…だっけ?」


よかった、名前は知られていた。


「うん。急で悪いんだけど、ちょっとコレ聴いてみてもらえないかな」


そう言って、MDを差し出した。


「?」


千春は、それをそっと受け取った。


「俺のオリジナルなんだけど、ドラムのアレンジが気に入らないんだ。矢板さんの耳で聴いてもらって、ちょっとアドバイスして欲しいんだ」


「へえ、別にいいけど、ねえ?」


千春が伊崎に同意を求める。


「うん、やってあげれば?」


くそ。


上からモノ言うんじゃねえよ。


「じゃ、明日にでも感想言うねー。これ、借りてっていいんでしょう?」


千春が俺にMDを示し、ニコっと笑う。


う、可愛い…。


「ああ、じゃあ、明日また…」


ちょっとダラけた顔で応じてしまった俺は、慌てて我を取り戻すと、伊崎に言い放ってやった。


「悪いね。彼女、ちょっと借りるね」


「ふぁーい」


リードをくわえたまま、伊崎は余裕をぶっぱなした軽い返事を俺にしてきた。


そんなんしていられるのも今だけだぜ。


俺は、練習室に向かう二人を背中から見送った。


本当の勝負は明日からだ。


見てろよ、伊崎。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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