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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ③

家に帰った俺は、ずっとドキドキが止まらなかった。


自信はあるんだ。


あの曲に反応してくれるのは間違いないと。


だけど、正直怖い部分もある。


千春があの曲を伊崎と二人で聴いて、「なんだこれ」と腐している可能性だってある。


俺の曲が笑いものにされるのだけは許せない。


いや、信じよう。


あの曲に、必ず彼女は食いついてくれる。


俺は祈るように目を瞑った。


 

 

 

翌日…。


まさかの講義前だった。


「有野君!」


振り返ると、千春だった。


昨日渡したMDを持っている。


「これ、面白かった!」


「え、あ、そう。ありがとう…」


正直、面食らっていた。


「これから講義?そんなのいいから、ちょっとコッチ来て」


活き活きした表情をパアッと輝かせて、千春は俺の腕を引っ張っていった。


中庭に連れて行かれ、どさりと芝に座り込んだ。


千春は自分のバッグからMDウォークマンを取り出す。


「はい」


イヤホンの片方を差し出された。


俺のMDを再生する。


「ここ、ここね」


曲を一時停止すると、千春は手のひらで自分の膝を叩いた。


「ここは、ツッツッタッツタツタタカタンツツツッツッツタッツタツタタカタンツツ…って繋げていくのがいいと思うの」


「うん…」


「でね、この最後のところは…」


水を得た魚のように、楽しそうにリズムを刻む千春。


柔らかい日差しが彼女をキラキラと包み込んで、俺は夢を見ているかのようだった。


「ね、聞いてる?」


つい見惚れていた俺に容赦ない突っ込みが入る。


「ほら、ここも。こうやると面白くない?」


「ああ、ホントだ。変わってていいね」


俺と千春は、そこで小一時間、その曲のアレンジについて語り合った。


「いやー、でもビックリした。有野君、こんなコミカルな曲も書けるんだね」


「ちょっとね。たまにはハメ外したくて…。あんまり無いっしょ?みんな、カッコつけたい時期だし」


「あ、思いついた!」


千春は、また新たに可笑しなアイディアを思いついて、俺に聞かせてくれた。


「うん、いいね。そのバケツみたいな音」


笑い転げているうちに、俺はすっかり時間を忘れていた。


千春はよく笑う子だった。


俺もこんなに爆笑したのは久しぶりだった気がする。


「あー、あー、苦しい。有野君と私、笑いのツボが合うねえ」


目尻の涙を拭きながら、千春はやっと一息ついた。


「ちょっと、この曲。私に叩かせてくれない?」


よっしゃ。


俺の待ち望んでいた言葉だった。


「もちろん!でも、君のバンドの方は?」


「大丈夫。抜けるワケじゃないんだから。ライブの掛け持ちくらい余裕だわ」


この場で、俺と千春はユニットを組むことが決まった。


あと2、3曲くらい一緒に作って、今度のライブに披露しようということになり、俺のテンションは目一杯上がった。


お互いの電話番号を交換する。


こんなささやかな事で幸せを感じられるとは思わなかった。


「矢板さんは…」


「それ、やめよ。千春でいいから。ね、タケちゃん!」


そう言って、悪戯っぽく笑う。


俺たちは固く握手した。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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