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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ⑨

千春の腕を掴んでいた俺の手に力が入った。


「いっ…」


千春が顔をしかめ、俺は怯んで腕を離した。


「ごめ…」


「オイ」


近づいてきた伊崎が俺の肩を強く圧した。


俺の片足が後ろに一歩下がる。


伊崎の顔面が俺の顔スレスレに寄って、思わずそむけてしまった。


「誰の許可とって、人の女とデートしてんだよ?」


伊崎の言葉にカチンときて、俺はそむけていた顔を元に戻した。


「ああ?」


「…んだ、コラ」


至近距離での睨み合いが続く。


「ちょっと、やめてよ」


千春が俺の服と伊崎の服を両方引っ張る。


「千春は、俺の恋人なんだよ。あんまり目に余ることしてほしくないね」


歯を食いしばりながら、伊崎が言う。


俺より背の高い伊崎に気圧されない様に踏ん張った。


「人の心は変わんだよ!誰と一緒にいようが千春の勝手だろうが」


「心変わりしたって言うのかよ」


その問いに俺はちょっと自信がなかったが、勢いで頷いた。


「ああ。千春は俺と付き合う」


「ちょ…、タケちゃんっ!」


千春が慌てている。


「へーえ。この千春を見ると、そんな感じはしねえけどな」


伊崎のこめかみがピクピクと青筋だったかと思うと、俺の視界に火花が散った。


よく分からずに、突然襲った衝撃に耐え切れず、俺は尻餅をついた。


 ―― あ、殴られた?


頬にジリジリとした熱さを感じて、思わず拳でぬぐうと、手の甲が赤く染まった。


「…血…」


その瞬間、俺の頭は完全に冷静さを失って、フラリと立ち上がると雄叫びをあげて、伊崎に殴りかかっていた。


景色に色はなかった。


音も聞こえない。


自分が振り上げる拳も、目の前にいる伊崎も、悲鳴をあげる千春も。


みんな、スローモーションだった。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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