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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ⑪

週明け。


まだ身体は痛む。


時間が経って、顔面が青く腫れあがっていた。


気は乗らなかったが、千春と伊崎の動向が気になって、今日もちゃんと登校した。


「あれ、有野、どうしたのその顔」


「え?殴られたの?」


講義に出ると、同級生たちが興味津々の顔で、俺に声を掛けてくる。


曖昧な笑顔で誤魔化し、俺は一人で練習室に向かった。


音楽だけは、俺を癒してくれる。


そういえば、確かあの曲の楽譜が戸棚に入ってたはずだ。


俺は、様々な楽譜が収められている戸棚から、一冊取り出し、パラパラとページをめくった。


「あった」


グランドピアノに譜面を立てかけると、初見でポロポロと音を奏でる。


心地よい和音に酔いしれた。


弾いても、気持ちのいい曲だ。


その時の俺は、あまりに没頭しすぎて、ドアが開いたことにすら気付かなかった。


弾き終えて、突然拍手をされたので、心臓が飛び上がるほどビックリした。


振り返ると


「小さな願い…だね。この間の映画の…」


俺は目を疑った。


「千春…」


「ごめんね、タケちゃん」


そう言って、グランドピアノに近づいてくる千春。


俺は、傷だらけの顔を見られるのが恥ずかしくて、椅子に座ったまま顔を背けた。


すっと顔の前を千春の右手が伸びて。


俺の身体は、ふわりと柔らかい香りに包まれた。


「ちは…」


千春の腕にギュっと力が入る。


「ごめんね…。痛かったよね…」


俺の髪をそっと撫でる千春の手。


優しく、力強く、まるで女神様にでも抱きしめられているような、そんな感覚。


あまりにも心が安らいだものだから、不覚にも涙を零してしまった。


千春の腕に落ちていく雫。


「千春、俺…」


「言わないの」


千春は、俺が泣き止むまで、そのままでいてくれた。


どれだけの時が流れたのだろう。


俺の呼吸が正常に戻った頃。


耳に心地よく響いた千春の声。


「私、タケちゃんのことが大好きよ」


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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