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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ⑫

「嘘…」


俺の口をついて出たのは、そんな情けない台詞だった。


千春はニコッと笑って、俺を正面から見た。


「ホントよ」


俺、伊崎のこと怖かったのかな。


殴られたショック。


殴った衝撃。


身体が全身で覚えてて、なんかもうそういうの嫌だなって臆病になっているみたいだ。


「祥太郎とは終わりにしたから」


信じられない言葉だった。


「え?」


「大事にしてもらえるのは嬉しいことだけど…。手に入れる為に人を殴るのは、許せないなって思ったの」


真剣な顔で、千春が言う。


ハッとして、聞いてみた。


「まさか、千春も…、殴られたの?」


「ううん」


笑顔で左右に首を振る。


「あ、そう…」


安堵の溜息が出た。


「殴られてはいないけど、人道的にはちょっと外れたことをされそうになった…かな」


千春が妙な言い回しをしたが、その言葉の裏に隠された真実が急に生々しく俺の脳裏に浮かんで、カッと顔が熱くなった。


「おい、伊崎のヤツ、まさか無理矢理…」


俺の口を千春の指先が止めた。


「大丈夫。心配するようなことはなかったから」


「本当に?」


「本当に。とにかく、祥太郎と私の関係はもう終わったの。バンドは次のライブが終わるまで続けるけど、それで抜けるつもり…」


次のライブまで、あと二週間。


それまでは、まだ伊崎の手の届くところにいるんだ。


俺がよっぽど不安げな顔をしていたのか、千春がプッと噴き出した。


「そんなに信用出来ない?」


「え、いや、そんな…」


俺は、初めて弱気になっていた気がする。


人を好きになると強くなれると思ってたけど、逆だな。


俺は、不安で不安で堪らない。


千春が俺の傍にいてくれると言っているのに、気付いたら、またスルリと腕の中から逃れて行ってしまいそうで。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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