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* 第二十三話 * ~毅の場合~ ⑯終

やめろ。


やめてくれ。


これ以上、見たくない。


そう思いながら、俺の足はその場を動くことはなかった。


耳を塞いでしまいたかったが、その無情な台詞は俺の鼓膜を振るわせた。


「結婚しよう、千春」


会場中がワアッと盛り上がろうとしたが、司会がまあまあと手のひらで制した。


信じられないといった様子でステージの上で立ち尽くしている千春の反応が待たれる。


人々は固唾を呑んで見守っている。


俺は、このたった数週間の間に、この人に見切られるのか。


伊崎を見つめる千春が微かに頷いたように見えた。


ぱあっと伊崎の表情が明るくなり、伊崎は千春の左手をとり、薬指に婚約指輪をはめた。


会場がどっと沸き、拍手と歓声に包まれた。


「おめでとう!」


「おめでとう!」


その声に俺は我に返る。


どうやら知らず知らず息を止めていたようで、俺は大きく息をついた。


自分の手のひらを見つめる。


一度はこの手で抱いたのに…。


千春は、するりと抜け出て、よりによって元の場所に戻っていってしまった。


何が足りなかったのだろう。


俺の愛は、伊崎の愛に比べ、何が劣っていたのだろう。


「アンコール!」


客席のどこかからそんな声が聞こえ、それに応じた伊崎がまたサックスを手に取る。


幸せいっぱいに微笑んだ千春がドラムの元に戻る。


あんな輝き、俺にはもう見ていられない。


千春のカウントの音が聴こえ、演奏が始まる。


「殴られ損だな…」


俺はステージに背を向け、会場を出た。


もう涙も出やしない。


さよなら、千春。


いつか分かる日がくるのだろうか。


俺がフラれた理由…。


 -終-


Comment

cdoor | URL | 2008.12.24 22:51 | Edit
全部読んでから書くからちょっと待っててね♪
今日は瞬さんへ、クリスマスポチ☆☆☆
cdoor | URL | 2008.12.26 18:42 | Edit
ご無沙汰。
一気に読んだよ。
心理描写上手。
ぐいぐい引き込まれた。
ボクも音楽で今とある女性と共同制作してたりで、
まるで自分のことのように感じてしまった。

ホント「何が足りなかったのだろう」?
異性をめぐっては、
ボクもきっと有野毅のようになる。
「恋」と「嫉妬」は切り離せない。
相手をしばるようなこと、
ついつい言っちゃうもんだよね。
でもそれって女性にとってうんざりするのかも…。
それ、許せない?
許せない人もいれば、
許せちゃう人もいるんだろうな。

千春、
毅と伊崎、どこで天秤にかけた?
香月 瞬 | URL | 2009.01.13 16:28
いつもありがとうございます。
レスが遅くなっちゃってごめんなさい。

共感してくれる部分があったみたいで嬉しいです。
さあ、どこで天秤にかけたんでしょうね。
女性の方が変なとこシビアだったりしますが…。

束縛はどうなんでしょうね。
あんまりがんじがらめになった経験ないので。
私は縛っちゃうタイプのくせに縛られるのは嫌いです。
ええ、B型ですから。
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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