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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ⑤

慶子が帰宅後、家の電話が点滅、留守電に輝元から数件のメッセージが残っていた。


メッセージを聞かずに消去すると、輝元の携帯電話に掛け直した。


「もしもしっ?」


必死な声に、少し笑ってしまう。


「もういいよ、テル。詩真を幸せにしてあげて」


「違うんだ、慶子。俺…」


「何を言っても、言い訳でしょ?私、何よりも嘘吐かれていることが嫌いなのよ」


輝元が黙ってしまった。


「詩真が…、ずっとテルを好きだったのは本当みたいだから」


受話器の向こうで輝元のすすり泣く声が聞こえる。


「こんな別れ方するとは思わなかったし、一生…許せないとは思うけど。赤ちゃんには罪ないでしょ?」


涙が溢れてきたので、気付かれないようにそっと受話器を置いた。


 ―― 先に泣くなんて、ずるいよ…。


暫く泣き続け、ふと窓の外を見ると空が白み始めていた。


なにもかもを無くした夜が終わっていく。







数日後、輝元の父親から慶子のもとに連絡が入った。


彼の実家にて、輝元と慶子と両親の四名で話し合いがもたれた。


「あっちに子どもが出来てしまったからには、慶子には申し訳ないが、詩真と一緒になろうと思う」


輝元は自分に言い聞かせるように、キッパリそう言った。


長年に渡り、輝元と付き合ってきた慶子と親しくしてきた両親は、今回の事態にたいそう立腹していた。


「彼女に堕胎してもらうことも、認知だけして養育費を渡して母子だけで生活してもらうことも、いろいろ選択肢はあるのよ?」


輝元の母親は、慶子の手前もあったのか、そう提案したが、輝元は首を縦には振らなかった。


慶子もそれでいいと思った。


実家は運送業を営んでいて、地元では名士で通っている。


そこを継ぐつもりで、大学卒業後、実家で働いていた輝元は、その場で父親にクビを言い渡され、勘当された。


母親は泣きながら、慶子に頭を下げ続けた。


「お母さん、私は大丈夫ですから。ご縁がなかったんですよ」


慶子は、涙を堪えて、そう伝えた。


話し合いの結果、輝元は職を失い、実家への出入りを禁じられはしたものの、新しい家族の生活の場として、マンションを買い与えてもらうこととなった。


それ以外の援助は今後一切ないということで落ち着き、慶子には相応の慰謝料を渡してきた。


「ごめんなさいね。こんなことくらいしか出来ないけど…」


母親は慶子の手を両手で握って、言った。


慶子は一旦は固辞したが、両親の強い勧めもあり、有難く頂戴することにした。


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Comment

cdoor | URL | 2008.10.28 11:19
> 彼女に堕胎してもらうことも、
> 認知だけして養育費を渡して
> 母子だけで生活してもらうことも、
> いろいろ選択肢はあるのよ?

うーんどうだろな。
自分の息子がこういうシチュエーションで
こういう事態に陥ったとしたら、
息子がはらましてしまった女に堕胎してもらおう
という発言はするかな?…

どうであれ
自分の息子がやっぱり第一だから、
慶子に対しては「申し訳ない」の
一点張りしかないと思うな、
僕が輝元の父親または母親なら。
香月 瞬 | URL | 2008.10.28 11:20
>cdoorさん

このような事態は未経験なので、実際のことを思うと自分がどう言うかは分からないですけどね。
先の事を考えた上で、堕胎という選択肢を示す人もあると思います。
まして、降って湧いた女。
意地でも出産すること、させることが当然の幸せだとは思ってないかなぁ。
命って考えちゃうと軽々しい事は言えませんが…。
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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