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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ④

自分の恋人と可愛がっていた後輩との間に新たな命が芽生えたと告げられたあの夜から、もう七年が過ぎる。


慶子が生きてきた人生の中で、あれほど驚愕し、激怒し、絶望し、慟哭した夜はない。


それでもあの時、なんとか落ち着きを取り戻し、最後に詩真に聞いた。


「テルに…、無理矢理に、そういう関係を迫られたワケではないのね?」


「違います…。私、輝元先輩を愛してます」


その言葉を聞いた慶子は、これまでの詩真との付き合いを全て否定されたことに気付き、自分は輝元に近づく為の道具だったに過ぎない事を悟ったのだった。


思えば、滑稽な関係だったのだ。


二人のデートに何故、第三者がくっついてくるのか。


最初のうち、輝元は嫌がっていたのに、慶子が「可愛い後輩なんだから、構わないじゃない」と彼女の非常識な行動を許していた。


それがこんな結果を招き、自分の甘さが情けなくて情けなくて、詩真を一方的に責めることも出来ないでいた。


慶子は、震える手で詩真の部屋の電話の受話器を上げる。


短いコールで、輝元が電話に出た。


「慶子よ。今すぐ…、詩真の部屋まで、来て…」


数分後、現れた輝元は、何かを決心したような生真面目な顔で現れた。


その表情を見ただけで、慶子は「もう、終わりなんだな」と感じた。


三人で膝を付き合わせる。


長い長い沈黙。


それを破ったのは、輝元だった。


「慶子、…ごめんな。あの…」


「先輩!なんで、慶子先輩に謝るの?」


詩真の言葉に思わずポカンとなる。


「謝るんだったら、私にだよね?だって、慶子先輩とはもう別れるからって、私たち付き合ったんでしょ?」


輝元は少し慌てた感じで、詩真を止めようとした。


「いつまでもズルズルして、変よ」


どうやら、輝元は慶子とは別れた前提で詩真に手を出したらしい。


それが、いつまで経っても三人で会うことが変わらず、詩真曰く「ウソツキ!」ということのようだ。


慶子にとっては、どれもこれも寝耳に水の出来事で、輝元の行き当たりばったりの方便には、呆れるしかなかった。


いつのまにか、それぞれ自分が本命の彼女だと思いながら、三人で会っていたのだから。


呆れ果てた慶子は立ち上がり、玄関に向かう。


瞬間、輝元が追いすがる。


「もう話すことないわ。私は貴方とは別れるし、結婚でも出産でも二人で勝手にやって」


最後の、精一杯の、プライドだった。


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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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