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* 第二十話 * ~慶子の場合~ ②

「娘が死んだって…、美園ちゃんのこと、だよね…」


 ―― ざ・ま・あ・み・ろ。


慶子の心の奥の方から聞こえた声に愕然とする。


そんなことを考えた自分を打ち消そうと慌ててメールを返信する。


【何があったの?奥さんは?大丈夫なの?】


送信すると、そのままギュっと携帯電話を握り締め、目を瞑った。






鈴木輝元は、かつて慶子が初めて結婚を意識した元カレである。


大学4年の頃から、六年付き合った。


それから、輝元と慶子を慕って、二人の後ろを付いて回っていた大学の後輩…、中川詩真。


この三人は、大学を卒業したあともよく一緒に遊んだものだった。


恋多き女の詩真は、二人によく恋愛相談をしてきた。


デートの日も押しかけてきて、二人に自分の相談話を延々と語りだす。


輝元は少々呆れながら、慶子は割と親身になって、詩真の話に付き合ったものだ。


詩真は、そんな図々しい態度ながら、心は案外繊細で、ちょっとしたことで薬を沢山飲んでしまったり、手首に傷をつけたりしてしまう。


他人を振り回すことで、自分に対する愛情を量るタイプ。


そんな詩真を放っておけなくて、慶子はいつも関わって損するタイプ。


「慶子、少しあの子と距離置いた方がいいんじゃないの?」


見かねた輝元が、そんなアドバイスをしたこともあった。


「ダメよ。そんな事したら、詩真は本当に死んじゃう子よ?」


元来、おせっかいな方ではなかった慶子だったが、詩真は特別だった。


本当に妹のように可愛がっていた。


真夜中でも遠慮なく電話が掛かってくる。


「慶子先輩、相談があるんですけど…」


「今日は何があったの?」


少し面倒な思いもあったが、私は頼られている、必要とされていると実感出来る。


そんな思いから、慶子はいつでも詩真を優先して、時間を割いた。


いつもなら機関銃のようにああでもないこうでもないと喋りだす詩真だったが、その日はやや口が重かった。


「どした?なんか辛い?」


電話の向こうは静かで、どうやら泣いているらしい息遣いだけが受話器を通して聞こえてくる。


「詩真?大丈夫?傷つけたりしてない?」


ちょっと異変を感じた慶子は、慎重に声を掛ける。


「……赤ちゃん」


「え?」


「出来ちゃいました…」


搾り出すような声だった。


堰を切ったように、詩真の泣き声が聞こえた。

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Comment

美琴 | URL | 2008.10.27 16:22
■ふむ~

「他人を振り回すことで、自分に対する愛情を量るタイプ」

この一行で詩真のキャラクターが理解できました。
素晴らしい・・・ 凝縮された的確な表現に脱帽でございますっ!
cdoor | URL | 2008.10.27 16:23
テンポいいね。
知らず知らずに香月ワールドに飲み込まれていく…。
美琴ちゃん、そう思わない?♪
応援☆☆☆☆
香月 瞬 | URL | 2008.10.27 16:26
>美琴さん

今回は後味悪いのを狙ってみます~。
早々にキャラを掴んでもらえたようでホッ。


>cdoorさん
香月ワールドって嬉しい響きですね。
久々に女性のドロドロをやります(予定)。
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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