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* 第十九話 * ~達矢の場合~ ⑮終

服を着た達矢が、橙子の向かいに座った。


「何、泣いてんの?」


橙子は無言で首を横に振ると、指で溢れる涙を拭った。


「…立て直そう…、私たちの劇団」


そう言った橙子をじっと見つめて、達矢は思った。


 ―― 私たちの…劇団。


「辞めていった皆にも声掛けたの。もう一度、皆でやり直そうよ」


達矢は、ずっと自分のことしか考えていなかった。


桜子を愛した自分が満足出来る舞台しか。


旗揚げの時から一緒である同志の橙子や、賛同してくれた仲間たちを蔑ろにしていたことに気付く。


「俺…、ごめんな…」


達矢は橙子を正面から真っ直ぐに見た。


「また、一緒に頑張ってくれるか?」


「もちろんよ」


二人は、固く握手を交わした。






 *






「すまん!書けなかった!」


稽古場に辿り着いた達矢は劇団員たちに潔く頭を下げた。


ストレッチ中だった皆があっけにとられた顔で達矢を振り返った。


「焦らない、焦らない」


汗を拭きながら橙子が近づいてきて、達矢の肩を後ろから揉んだ。


「当面は再演でも凌げます。俺たち、新作にこだわってないっすよ」


「そうそう。柴田さんらしい作品にまた出られるなら、ゆっくり待ちます」


達矢は皆の優しい笑顔に包まれた。


なんだか照れくて、鼻の下を掻く。


「あれ、やろうよ。旗揚げ公演の時のさ…」


橙子が提案する。


「あの作品で、初心に帰らない?」


 ―― それもいいかもしれない。


達矢はゆっくり窓辺に向かって歩くと、外を眺めた。




 裏切られたなんて思っていない。


 俺が君に溺れてしまっただけの自業自得。


 桜子、…またどこかで舞台に立っているのか?


 同じように誰かを夢中にさせているのだとしたら…。




達矢の胸が少し痛んだ。




 -終-




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Comment

cdoor | URL | 2008.10.27 16:09
一旦壊れると散り散りになる
ことの方が多いもの。
ちゃんと元に戻れるのは
達矢の「人間力」ですね。
応援☆×4
次のシリーズも楽しみにしてるよ♪
美琴 | URL | 2008.10.27 16:10
■お疲れさまでした!

読後感が物凄くいい物語でした。
桜子が死んでいた、というのは意外でした。うん。

でも、もったいないなあ・・・

この題材、それぞれのキャラクター、シチュエーション等々、短編ではなく長編でじっくり丁寧に書いた方がいい。
長編なら、桜子の過去や桜子の死がもたらす沢山のメッセージ、橙子とのエピソード、達也の再生と桜子への想いももう少し詳しく書けたと思います。
胸の奥まで沁み渡る感動と爽やかな読後感のある小説になるでしょう。

さあ、長編に書き替えなさいっ!(笑)
書き替えて、どこかの文学賞に挑戦しなさいっ!(笑)

おせっかい美琴より
香月 瞬 | URL | 2008.10.27 16:12
>cdoorさん
最後まで有難うございました
そうですね。
なんか今回は恋路とは少し外れたラストだったかもしれません。
いつもと違ったテイストで書けたのは収穫でした。



>美琴さん
あはは。
素敵なアドバイスありがとうございます。
今回、珍しく(ぉぃ)推敲推敲で脳ミソいっぱい使いました!
長編…、これに没頭できる時間が得られたら、挑戦してみたいですねぇ。
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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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