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* 第十九話 * ~達矢の場合~ ⑭

「はは…」


達矢は乾いた笑いを漏らした。


もはや笑うしかなかった。


「そんな馬鹿なこと…」


達矢は片手をおでこに当てて、くっくっくと笑った。


「僕だって、信じられなかった。でも、間違いないと思うんだ」


「桜子が、…もう死んでるってことでしょ?じゃあ、俺たちが会って、話して、抱いたあの女は一体何だって言うんです?」


「…あんまり口には出したくないね」


達矢は軽く膝を叩くと、ベンチから勢い良く立ち上がった。


くるりと主宰を振り向いて、缶コーヒーを高々と挙げた。


「ごっそさんした。じゃ…」


そう言うと、大股で歩き出す。


なんだかムカっ腹が立った。


だけど、身体が軽くなって、視界が明るく開けたような気がした。


少し、清清しささえ覚えた。






達矢がアパートに戻ると、部屋の中に橙子がいた。


「…さっき、鍵も掛けずに出て行っちゃったから…」


橙子が気まずそうに言い訳した。


「ああ、すまん」


達矢は橙子を気にも留めず、そのまま風呂場に向かった。


服を脱いで、熱いシャワーを浴びる。


久しぶりに髭をあたった。


生き返った気がする。


さっきの主宰の話を思い出す。


 ―― そうか、桜子。お前は死んだ人間か…。


目を瞑り、感慨深く、桜子を想った。


この話は誰にも言うまいと心に誓う。


両手で頬を二度はたいて、風呂場を出た。





トランクス一丁で首にタオルを引っ掛けただけの達矢を見て、橙子がそっぽを向いた。


「照れるなよ」


「…バカ。早く上着なさいよ!」


転がっていたTシャツを投げつけた。


「ぅおっと」


橙子が、出かける前と雰囲気の変わった達矢を不思議そうに見つめた。


「なんか…、いつもの柴田…だね」


ん?と反応した表情を見て、橙子は心底ホッとした。


「憑物が落ちたんだよ」


達矢がニッと笑った。


その拍子に橙子はなんだか泣けてきた。




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Comment

cdoor | URL | 2008.10.27 16:06
やっぱり橙子はいい人だな。
小林聡美を髣髴とさせる。
僕はあの、「かもめ食堂」をモチーフにした
食パンのコマーシャルが大好きなんです。
香月 瞬 | URL | 2008.10.27 16:07
■小林聡美!?

うわ~、そういう見方をしてくれた方、初めてなので新鮮です(*^□^*)

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プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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