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* 第十九話 * ~達矢の場合~ ⑪

桜子は、達矢の前から、消えた。


達矢にとっては、突然の出来事で、青天の霹靂であった。


携帯電話は解約されている。


住まいを訪ねてみたが、彼女はいなかった。


住んでいたという形跡すら感じることが出来なかった。


達矢は何をする気力も失い、部屋に引きこもっていた。


稽古場にも顔を出さない。


もちろん、新作なんてもう書けない。


 ―― 何を信じればいい?







一方、橙子は、様子を見守りつつ、達矢の知らないところで劇団の建て直しを図っていた。


辞めていった元劇団員や現在残っている仲間たちに、一生懸命掛け合った。


もともと達矢を慕って入団してきた彼らは、変わってしまった達矢を受け入れることを快くは了承してくれない。


だが、橙子は根気良く、必ず達矢を元に戻してみせるからと、説得にまわった。


仲間がようやく目を覚まし、橙子に賛同してくれたある日、橙子は達矢のアパートを訪れた。


湿気のこもった部屋からは、ゲッソリと痩せた無精髭の男がふらりと出てきた。


「…柴田」


達矢は、玄関に立つ橙子をスルーして、そのまま部屋を出て行った。


「ちょっと、どこに行くの?」


「お前と話したくない」


そう言い残すと、達矢は、外階段を降りていった。







達矢は、久しぶりに電車に乗って、街中に出た。


小汚い格好の達矢を道往く人が露骨に避けて通るのが分かる。


軽く自嘲し、背中を丸め、歩き続けた。


どんよりとした空気を感じ、ふと顔をあげると、前から病的に痩せた顔色の悪い男が歩いてくるのを認めた。


思わず、歩みを止める。


 ―― あれは、俺…か?


達矢の脳裏にドッペルゲンガーという言葉が浮かんだ。



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Comment

cdoor | URL | 2008.10.27 16:01
ここ数日ちょっとバタバタしてて
ちゃんと記事読めてませんでした。
ゴメンね。
今日これまでのところ全部読んだよ。
なるほど、桜子にやられてますね、達矢は♪
橙子は立派だね。
達矢は橙子という“お母さん”に
見守られているバカ息子って感じかな。
応援☆☆☆☆☆←5個も、欲張り。
香月 瞬 | URL | 2008.10.27 16:02
■いえいえ

>cdoorさん
ごめんだなんて、勿体ないです。
なるほど、お母さんか~。
自分で書いといて、ちょっと納得…。
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香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
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