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* 第十九話 * ~達矢の場合~ ⑤

「柴田ぁ、先行ってるわよ!」


橙子を先頭に劇団員たちが、歓迎会の為に下北沢にある行き着けの居酒屋に移動していった。


桜子は、皆とは一緒に行かずに達矢を待っていた。


「みんなと行けば良かったのに」


達矢は困惑気味に桜子と共に稽古場を出た。


私服に着替えた桜子は、相変わらずスッピンだったが、とても可愛らしかった。


金曜の夜、街は活気づいている。


駅までの道のり。


桜子は、歩くのが遅いのかちょこちょこと一生懸命に達矢についてきた。


混雑する電車内。


吊革や手すりに掴まればいいのに、何故か自分の足だけで踏ん張っている桜子。


自分の左手を吊革に引っ掛けながら、達矢は、不思議そうに小さな桜子の様子を見下ろしていた。


「どっか掴まりゃいいじゃん」


思わず、そう声を掛けたが、桜子はフルフルとかぶりを振って、頑として踏ん張っていた。


 ―― 子どもみてえ。


ガクンッ。


車内が揺れ、周囲の人たちがどっと傾いた。


「や…」


案の定、ふらついて倒れそうになった桜子を達矢の腕が咄嗟に支える。


「ほら、だから、掴まっとけって言っただろ?」


「すいません…」


桜子はそう言って俯くと、達矢の胸に右手を置いた。


 ―― そ、そういう意味じゃなく…。


達矢の顎のすぐ下に桜子の頭がある。


ドキリとした心臓の音が伝わらないかとハラハラした。


下北沢駅に着くと、乗客がどっと降りた。


二人もその波に乗り、ホームに降り立つ。


そのまま階段に向かって、歩き出す。


「これから行く店はさ、」


隣にいる桜子に話しかけると誰もいなかった。


「あれ?」


慌てて振り返ると、遥か後方の人波に桜子が埋もれていた。


笑いと溜息が同時に出た。


「…しょうがねえなぁ」


達矢は人の流れに逆らって、少し後ろに下がると、グイと桜子の手を掴んだ。


「この程度の人ごみに紛れてんじゃねえよ。渋谷とか行けねえぞ?」


そう言って笑うと、真っ赤な顔をした桜子のほっぺたを軽くつまんだ。


「迷子になるから、このまま掴まってろ」


達矢は、桜子の手を握ったまま、引っ張るように歩き出した。



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Comment

Marcy | URL | 2008.10.27 15:55
> 達矢の胸に右手を置いた。
何だか今日イケそうな気がする~♪
っていうか、オレならこのままドロンするぜ。
香月 瞬 | URL | 2008.10.27 15:56
■あると思います

あ、Marcyだ!!
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香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

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