FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

* 第十六話 * ~麻弥子の場合~ ?終

意地っ張り。


この一言に尽きる。


「もう来てくれなくていいから」


里実は、あの時の麻弥子の言葉にカチンと来て、その後は二度と面会に行かず、おそらく保釈されたであろうその後も連絡を取らなかった。


気にならなかったと言ったら、嘘になる。


あんなに心配したのに。


麻弥子の方が一方的に里実を頼ったくせに。


そんな想いと、真実が明らかになる恐れと…。


里実が、勝手な想像と独断であの事務所に対して余計なことをした後ろめたさ。


絶対に麻弥子には知られたくなかった。


そして、6年の時を経た今でも、驚愕のニュースが飛び込んできたあの瞬間を里実は忘れはしない。







そう、もうあのギタリストはこの世には、いない。







風の噂では、麻弥子は地元に戻っているらしい。


麻弥子が参加しなかった同窓会で、そんな話を聞いた。


「なんだか精神病んじゃって、引きこもりらしいよ。里実、何か知らないの?」


「麻弥子が東京に出てから連絡とってたのって、里実だけなんでしょ」


同級生から、いろいろ訪ねられたが、里実は曖昧に笑うだけだった。


 ― 半分は、私のせいかもしれない…。


ズシリと心に重りが乗っかった気分だった。







里実の想像はこうだ。


かの人気バンドのギタリストと不倫の関係にあった麻弥子は、彼が覚せい剤に手を染めていたことを知っていたと思う。


彼の家族はそれを知って、離婚に向けて別居したとも考えられる。


麻弥子は、彼が直接売人と接触しないように、買い付ける役割を担っていた。


そして、麻弥子が逮捕された日の非通知の着信。


あれは、ひょっとして、彼がなかなか戻らない麻弥子を心配して、なんらかの理由で彼女から知らされていた里実の携帯電話に掛けてきたのかもしれない。


里実からの電話で麻弥子の名と逮捕を聞いた事務所は、ヤバいことが表沙汰になる前に、彼を海外に高飛びさせたんじゃないだろうか。


麻弥子は全部分かってて、愛するが故に必死で隠し通し、彼を守ったのだと思う。


ただ、彼の死因は事故とも自殺とも、単に心不全としか発表されておらず、覚せい剤の影響があったのかどうか、一般人の里実には知る由もない。


いや、だが、こんなの絵空事だし、そもそも本当に麻弥子と彼が面識があったのかということすら定かではないのだ。


なんの証拠もない。


麻弥子は、あのギタリストと深い仲だったのだろうか。


それとも、ファンの行き過ぎた妄想だったのか。


もしくは、実は彼女が単独でクスリに手を出していて、あっちの世界の住人になってしまっていたのか。




わからない。


わからない。




 -終-


人気ブログランキングへ

Comment

Comment Form
公開設定

プロフィール

香月 瞬

Author:香月 瞬
短編小説を主に、様々な恋路を綴ってまいります。
友達のコイバナを聞くようなつもりで読んでいただけると嬉しいです。

検索&ランキング
参加しています。
にほんブログ村 小説ブログへ 人気ブログランキングへ
よろしくどうぞ。
カテゴリ
最新記事
Twitter
リンク
このブログをリンクに追加する
MicroAd
CHECK IT!
RSSリンクの表示
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。